2024年12月2日(月)

「永田町政治」を考える

2023年9月3日

 平安時代のエッセー、「枕草子」にも登場する〝人事異動〟のドラマ。2023年(令和5年)の日本でも、その季節が始まる。

 永田町を舞台にした自民党役員の改選と内閣改造だ。現職はポストにとどまることができるか、閣僚待望組は入閣を果たせるか、気を揉んでいるだろう。

昨年8月に行われた内閣改造。今年はどんな〝人事〟がなされるのか(代表撮影/ロイター/アフロ)

 岸田文雄首相は9月中旬を予定していると伝えられ、すでに何人かの名前やポストが取りざたされている。

 閣僚の首をすげ替える内閣改造、新政権発足による組閣もそうだが、人選によっていくつかのパターンに分類される。重要政策遂行に備えた顔ぶれ、抜擢人事による清新さのアピール、亀裂を防ぎ、修復にむけた挙党体制の布陣などだ。

 支持率の低さをかこつ首相にとっては、形勢挽回が緊急の課題だ。読売新聞が8月下旬に行った世論調査では、支持率低迷に歯止めがかかった一方、内閣改造による顔ぶれ一新を望む人は56%にものぼった。首相は、細心、熟慮のうえ人事に着手しなければならないだろう。

永田町が〝凪〟の夏場は人事断行の好機

 枕草子での人事のくだりは二十二段「除目に司得ぬ人の家」に登場する。読んだことのある読者も少なくなかろう。

 官吏任命の儀式、「除目」の日。ある貴族が何らかのポストに就くのではと期待して、以前仕えていた人たちや田舎に引っ込んでいる人たちが集まってくる。牛車や人の出入りが激しい中、飲み食いしながら吉報を待つが、式が終わった頃合いになっても動きがない……。

 このころの除目は春秋2回行われたと伝えられる。現代のそれに当たる「内閣改造」は夏から秋に行われることがほとんどだ。

 岸田首相は8月18日、訪問先のワシントンで記者団に「スケジュールは決まっていない」と語ったが、額面通りに受け取る向きは少ない。いまのところ9月中旬または下旬に行われるとの見方がもっぱらだ。

 岸田内閣における前回の改造は昨年、22年8月10日に行われている。次回が9月だとすれば、現閣僚の在職は1年余となる。

  前後4次、計8年4カ月にわたった安倍晋三内閣は、首相指名後の組閣を除いて途中、7回にわたって自民党役員、閣僚人事を行った。時期はすべて8月、9月、10月に集中し、そのうち2回は同じ8月3日に行われている。

 在任5年5カ月に及んだ小泉純一郎内閣は4回の改造を、やはり9月(3回)、10月(1回)に行った。

 古くさかのぼると、安保改定をめぐる騒動直後の1960年(昭和35年)7月19日に発足した池田勇人内閣は、東京五輪閉会の翌日、64年(昭和39年)10月25日に退陣表明した。この間4回、人事に手を付けたが、例外なく毎年7月18日と決まっていた。こうなればもう、在任1年の〝定期異動〟というべきだろう。


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