事項要求という抜け道
概算要求を形骸化させ、膨らませるのは、事項要求の乱発である。事項要求とは、概算要求の段階では、政策の具体的な内容が決まっておらず、政府・与党の調整を待たなければならず、具体的な金額が積算できないため、金額を示さずに事業項目だけを記して予算要望する手法である。
これまで、事項要求は例外だったはずなのだが、コロナ禍を契機に、各省は事項要求を多発するようになった。こうした最終的に政治的な思惑で金額が決まる事項要求の乱発は、概算要求を形骸化させるにとどまらない。
つまり、予算編成とは、各省庁が要求・要望した額を、財務省主計局が査定の段階で削減していくプロセスに他ならない。各省庁が要求・要望していない予算や事業について、予算編成過程の段階で財務省主計局といえども勝手に新規の予算を付けたり削ったりはできない。
しかし、最終的には政治的に決着される事項要求では、予算要求する各省庁は財務省主計局の査定プロセスを経ることなく、政治力を駆使して予算を確保できてしまう。裏口からこっそり予算を分捕っていることに等しい。
さらに、昨年の「骨太の方針」で、自民党内の積極財政派に配慮して付け加えられたプライマリーバランスの黒字化目標という財政健全化が「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」という但し書きが今年の「骨太の方針」にも引き継がれている。この文言も、概算要求を形骸化させ、膨らませる一因となっているのは想像に難くないだろう。
予算の抜本的な見直しが必要
かつては予算のシーリングとして機能した概算要求基準は、残念ながら現在はその機能を停止しつつある。実際、概算要求基準は現行の在り方が開始された13年度以降、11年連続で歳出総額の上限が示されず、費目別に要求額の目安が示されるだけだ。
元々、日本の予算は、当初予算は厳しめに査定されても、年度途中で必ず補正予算が組まれるので、財政規律が緩むと指摘されてきた。要は、予算の肥大化は、概算要求基準が形骸化しているだけではなく、年度途中で組まれる補正予算の見直しも含む抜本的な見直しがなされてはじめてストップできる。
実際、22年度決算では、当初予算と補正予算の歳出総額139兆円のうち、結果的に使う必要のなくなった不用額は11.3兆円と過去最高、使いきれずに翌年度に繰り越した金額も18兆円近く出ている。当初予算と補正予算をあわせた予算の肥大化で、政治家も官僚も金銭感覚がマヒし、その予算が本当に必要かどうかや、執行できるかどうかが考慮されていないのではないか。
歳出拡大の後には遅かれ早かれ負担増が待っていることは、すでにコロナ禍でのバラマキの後始末が始まっていることも明らかだろう。果たして、マイナスシーリングを復活させるなど、規模ありきの予算編成、膨らむ一方の予算に待ったをかける民意は高まるだろうか。