閣議決定された予算案は、年明けから始まる通常国会に政府予算案として提出され、まず衆議院、次いで参議院での審議を経て成立する。ただし、衆参両院で予算を実質的に審議するのは予算委員会のはずだが、いずれも、スキャンダルの追究に終始し、予算案が審議されることはほとんどなく、政府案がそのまま議決されるのが通例となっている。
当初予算に向けてさらに膨張する見通し
これまでは、概算要求の枠内に当初予算を納める努力がなされてきたのだが、コロナの頃から概算要求より当初予算の方が大きくなる傾向にある。実際、23年度予算に関しては、概算要求110兆円に対して当初予算114.4兆円となった。
2024年度は概算要求で114.4兆円であり、この他に金額を示さないで予算要求する「事項要求」があるので、120兆円前後と予算規模はまた過去最高を記録するのは確実だ。
形骸化する概算要求基準
概算要求基準は、池田勇人政権時代の1960年に、61年度予算編成のために導入された。所得倍増計画により各省庁からの予算要求が膨れ上がるのを見越した当時の大蔵省が、まずは予算査定の効率化を目的とし、その後歳出抑制の手段として活用されるようになった。
当初は前年度予算の50%増という、あってなきが如くシーリングだったのが、次第に天井が引き下げられ、財政危機により82年度にゼロシーリング、そして85年度にはマイナスシーリングとなった。しかし、マイナスシーリングによる一律の削減が予算の硬直化を招くとの批判から、特別枠を設けるなど弾力的な予算配分が可能となるよう工夫もなされた。
2024年度概算要求基準を見ると、予算を、「地方交付税交付金等」、「年金・医療等」、「防衛力整備計画対象経費」、「義務的経費」、「その他の経費(裁量的経費)」、「重要政策推進枠(特別枠)」に区分した上で、裁量的経費については前年度当初予算額の90%(「要望基礎額」)の範囲内で要求することとしている。こうした措置は、メリハリの効く予算となるように、査定を通して重点的な予算配分ができるように配慮したものといえる。
ただし、裁量的経費については10%削減したその削減額の3倍、義務的経費に係る削減額の3倍を「重要政策推進枠」として要望できるため、各省庁の概算要求額が膨らんでしまう。