2024年6月21日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年9月12日

 英エコノミスト誌8月26日号が「プリゴジンの死はロシアがマフィア国家であることを示す。健全な国は秩序を回復するために司法を使う。プーチンは暴力を使う」との社説を掲載している。その要旨、次の通り。

プリゴジンと共に暗殺されたワグネル幹部のウトキンの墓標(写真:AP/アフロ)

 プリゴジンの死亡が確認されれば、プーチンはより強くなるだろう。少なくとも今は、彼の23年の統治に対する最大の脅威を退けたことになるだろう。しかしこの死は彼が作ったシステムの弱さを暴露する。プーチンは強国の皇帝であるふりをしているが、現実には彼の腐った帝国は嘘、賄賂、弾圧で動いている。この殺害が示すように、ロシアの最終的権威はテロである。

 プリゴジンの乗ったジェット機は8月23日モスクワ北西のトヴェリ州で墜落した。プリゴジンは暴力的な人であったが、プーチンはプリゴジンに新たなビジネスや責任を与えて報いてきた。

 しかし、6月にすべてが変わった。正規軍に彼の兵士が吸収される見通しへの抗議として、彼はワグネルの部隊をモスクワの200キロメートルまで進軍させた。反乱を予見する力、あるいはそれを粉砕する力に欠け、プーチンは恥をかかせられた。それで彼は取引をし、プリゴジンは反乱を中止した。

 ジェット機墜落はプーチンが約束を破ったことを示唆する。墜落は、クレムリンが作ったマフィアの世界では裏切りが何につながるかを示す事例である。

 プリゴジンの排除はプーチンのロシア軍への支配を強化するだろう。ジェット機が墜落した同じ日にワグネルの6月の反乱を支持したと疑われていたスロビキン将軍が正式に解任された。プリゴジンが汚職と無能力で嘲っていたゲラシモフ参謀長とショイグ国防相はその地位にとどまった。

 プリゴジンの死はロシア国家のさらなる腐敗を示すものである。プーチンの終わりのないワンマン統治がなぜそれほど破滅的なのかを示す最高の事例である。力を集中させればさせるほど、プーチンと彼の固定観念、気まぐれ、憤慨がロシア自身の顔になって来る。

 プリゴジンの殺害はその憂鬱なパターンを拡大する。力の行使の国家独占に挑戦する反乱の後、健全な国家では秩序は司法システムを使って回復される。プーチンは暴力の誇示を選んだ。しかしこれはテロの均衡を再び作るだけで、秩序を回復しない。ロシアは法の支配、全ての近代国家が有能で安定した政府のために頼る諸制度からさらに外れていく。これはロシアを惨めな状態におく。

*   *   *

 この社説の趣旨には賛成できる。

 プリゴジンの反乱に対しては、彼を逮捕し、裁判をして、その罪を問うというのが普通の近代国家のやることである。事件後、プリゴジンと会談し、彼を許すような態度を示し、油断したところで搭乗機を墜落させ(防空ミサイルによって、あるいは、機内に仕掛けた爆弾の爆発によって)、他人をも巻き込み、殺害するなどというのは、普通の人間のすることではない。


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