2024年5月2日(木)

World Energy Watch

2023年8月9日

 2023年7月26日、西アフリカのニジェールで軍事クーデターが発生し、政情不安が広がっている。ニジェールは原発用燃料ウランの産出国であるため、同国の不安定化はウラン供給に影響を及ぼす恐れがある。さらに、隣国マリのように、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の進出や、周辺諸国による軍事介入の可能性など、ニジェール情勢の行方に注目が集まっている。

ニジェール政権を支持する人たちによるデモ。政情不安は続いている(AP/アフロ)

バズム政権と軍部との対立

 7月26日、ニジェール大統領警護隊の一部の兵士がバズム大統領を監禁し、大統領宮殿を封鎖した。同日深夜、「祖国救済国家評議会(CNSP)」と自称する、事件に関与した将校10人が国営テレビに登場し、「治安情勢の悪化と脆弱な経済社会的ガバナンス」を理由に、バズム政権を退陣させた旨を発表した。

 翌27日、ニジェール軍司令部も大統領警護隊によるクーデターへの支持を宣言し、28日には大統領警護隊長のチアニ将軍がCNSP議長への就任を発表し、軍事政権のトップを務めることとなり、憲法の停止や国家機関の解散を実行した。

 21年に民主的な選挙を経て発足したバズム政権が転覆する事態となったが、軍の権力奪取を支持する国民の姿も見られる。首都ニアメで軍事クーデターを支持するデモ行進が行われ、参加者の中には、旧宗主国フランスを非難したり、ロシアの国旗を振ったりする者もいた。反仏感情が高まる中、在ニジェール・フランス大使館が襲撃される事件が起きた。

 ニジェール軍事政権もフランスとの対決姿勢を強めている。ニジェール国内での公共放送「フランス24」とフランス国際ラジオ(RFI)の放送を停止させた他、フランスとの全ての軍事協力協定の破棄を発表した。

 フランスはイスラーム過激派対策のため、ニジェールに約1500人の兵士を駐留させているが、軍事協力の停止により、22年8月のマリに続き、ニジェールからも仏軍が撤退する可能性が出てきた。

 ニジェール情勢悪化の引き金となった今次クーデターの背景には、大統領と軍将校らとの対立関係があったと考えられる。ロイター通信の取材によれば、バズム大統領は自らの権威を示すため、前政権期の11年に大統領警護隊長に就任したチアニ将軍の解任に向けて動いており、両者の関係は緊張していた。

 そこに、バズム大統領が大統領警備隊の人員縮小や予算の精査を進めていたことが、関係悪化を決定づけた。さらに、フランスと米国との軍事協力の促進しながら、ニジェール軍の裁量権を制限したことに軍将校らの不満を生み出したとされる。


新着記事

»もっと見る