2024年7月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年9月12日

 バイデン大統領はかつてプーチンを雑誌のインタビューで「人殺し」と評して、ロシアが抗議したことがあったが、バイデンが言ったことが正解であったと言ってよい。今回もバイデンは、ロシアではプーチンが知らないで起こることはあまりない、と言っているが、正解だろう。

 プーチンのロシアは、上記の社説が言うようにマフィア国家というべきであって、このようなプーチンを国家指導者として交渉の相手とすべきではないと思われる。

ロシア国内への暗殺の影響は

 プリゴジンの死がロシア国内に与える影響については、プーチンのロシア軍への支配力はプリゴジンが批判していたショイグ、ゲラシモフの留任、プリゴジンと親しかったとされるスロビキンの解任で強化されるとの判断はその通りだろう。しかし、国内でのウクライナ戦争支持が国民レベルで強まることはないと思われ、プーチンが戒厳令を発布し、再度の動員をかけられる状況は出てこないだろうと思われる。

 残されたワグネル部隊の今後の動きについては、プリゴジン以外の司令官も同時に死んでおり、その今後については生き残りを図ることが一番の課題で、復讐に乗り出す力はないと思われる。正規軍への編入か、別の軍事会社への合流かが考えられる。

 プーチンはレニングラード大学の法学部出身であるが、「法の支配(rule of law)」をよく理解しておらず、ロシアを無法国家にしてしまっている。ウクライナ戦争は国連憲章2条4項(すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない)に違反している。

 国内法上は、彼が熱心にやっている歴史の書き換えはロシア憲法の「思想の自由」条項に反している。ロシア国民の市民権剥奪も行なっているが、これもロシア憲法での禁止に違反する。ポスト・プーチン時代にこれらは是正されることになるだろう。

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