このような理由で、日本の音楽パッケージ市場は、世界一の売上を保っています。
日本では、iTunes Storeの普及率が低い
さて、音楽配信に目を向けましょう。着信音に旋律を使う「着メロ」から始まった携帯電話向けの音楽配信は、電話機と通信環境の向上で「着うた」と進化し、大きな市場となりました。若年層に支持をされ「着うた系」と呼ばれる一つの音楽ジャンルを産み出すにまで至りました。ただし、前述の通り、フューチャーフォン(いわゆるガラケー)からスマートフォンへの移行で、「着うた」市場は崩壊への道を歩んでいます。
世界ではデファクトの音楽配信サービスになっているアップル社のiTunes Storeが日本では低いシェアになっている理由は何でしょうか?
最近まで、トップレーベルのSONY MUSIC ENTERTAINMENTの楽曲が買えませんでした。今でもいくつかトップクラスのアーティストは楽曲を提供していません。欧米に比べて、楽曲の品揃え不十分なことも理由として挙げられるでしょう。
もう一つの理由は、レンタルCD店の存在だと考えられます。レンタルCD店というのは、日本独特の業態です。アナログレコード時代につくられ「貸与権」と定義づけられた産業が、CDになっても引き継がれ、全国に2000店舗以上のCDレンタル店が存在します。アルバムを300円程度で貸し出しますので、iTunes Storeで購入するよりも価格が安い訳です。
これらの事情が相まって、日本の音楽市場は特殊な「ガラパゴス化」が進んでいます。
ストリーミングサービスが急伸する世界音楽市場
さて、伸張している海外の音楽配信市場を見てみましょう。
米国をはじめとして多くの国では、アップル社のiTunes Storeがデファクトになっていますが、昨年辺りから、Spotify、Rdio、Deezer、KKBOXなどのストリーミング配信の月額課金型サービスが伸張しています。月額1000円程度の金額で、クラウド上で管理された楽曲に、いつでもアクセスでき、聞き放題で楽しめます。
Spotifyは、スウェーデンから始まった、ストリーミングサービスです。Peer to Peerの技術者であったダニエル・エクが、「違法サイトより利便性の高いサービス」を掲げて創業しました。大手レーベルが資本参加して、協力体制をとっています。Facebookの経営陣からの評価も高く、グローバルなパートナーとなっています。2011年からは米国でもサービスを開始し、現在、全世界で、ユーザー数は2400万人、有料会員は600万人を超えたと発表されています。
その特徴は、フリーミアムと呼ばれるモデルです。無料でもサービスを楽しむことができますが、有料会員になることで、広告がなくなり、1曲当たりの再生回数の制限もなくなり、契約期間中はオフラインでも聞けるようになります。