固定電話網が発達していない国の方が、携帯電話の普及が早いという話に似ていますが、ダウンロード型のインターネット音楽配信が、欧米ほどは普及しなかった日本は、ストリーミングサービスにスムーズに移行できる可能性があります。
そして、ストリーミングとパッケージの相性は悪くありません。ユーザーとの音楽接点が増えて興味喚起が出来れば、アーティストとの関係性の証としてパッケージ購入への意欲は高まりますから、カニバルことなく両立できる可能性が高いです。
もちろん、パッケージのさらなる進化は必要でしょう。CompactDisc(CD)という規格は既に30年を超えています。非圧縮音源パッケージや、パッケージ購入ユーザー向けのクラウド連動コンテンツ特典など、工夫の余地は残っています。
歴史を振り返っても、ジュークボックス、ラジオ、MTVなど、新しいメディアの登場は常に音楽産業を刺激してきました。その都度、反対運動も起きますが、結果、音楽産業を活性化してきています。
クラウド型の音楽サービスが、新しい音楽産業復活の起爆剤になるのではないでしょうか?
従来型のビジネスモデルを守ることで、成熟し、やがて足かせになって、時代に取り残される、しかし、粘って残ったシステムと、最先端の技術の併用で、理想的な市場とマネタイズシステムを作り上げる、というのが、私が描く、近未来の日本の音楽市場イメージです。
様々な業界で、同様の袋小路に入っているかもしれません。デジタル化とソーシャル化で「Change or Die」が突きつけられている業種は数多くあります。守るべきことと変わるべきことを見極めて、成熟した日本市場を活性化するそんな発想が日本のビジネスパーソンに求められているのではないでしょうか?
ご意見、ご質問、異論反論、歓迎します。
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<用語解説>
・(音楽)パッケージ→CD以外にもカセット、レコードや映像商品であるDVDやBlu-Rayなどがある。
・着うた→携帯電話の着信音をメロディとして楽しむ「着メロ」の発展系として、CD音源を着信音として楽しむサービスとして「着うた」となった。Sony Music Entertainmentの登録商標である。通信環境やデバイスの進化により、当初の30秒から、楽曲全部を聞けるようになり「着うたフル」を呼ぶようになった。
・AKB商法→「会いに行けるアイドル」をキャッチフレーズに秋葉原の劇場をベースに始まったAKB48は、握手券や楽曲での中央位置で歌うメンバーを決める投票権などを付けることで、CDを1人のファンに大量に売らせる手法を確立した。
・ストリーミング配信→PCやスマートフォン、タブレットなどの端末にダウンロードせずに聴く方法。常時接続が広まったことによって、一般的になった。端末上でのキャッシュの管理により、オフラインでも再生できる場合が多い。
・コンバージョン率→無料会員が有料サービスに移行する割合のこと。
・Rdioは米国発、deezerはフランス発のサービスである。KKBOXは、台湾発のサービスだが、日本のKDDIが2010年に子会社化した。今年の6月からKKBOX JAPANとして日本でのサービスも始まっている。
● お知らせ
9月1日に「デジタルコンテンツ白書2013」(経済産業省監修)が発刊されました。編集委員として、音楽部分を書かせていただいています。興味のある方はこちらでご購入ください。
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