2024年7月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年9月18日

 この論説はバイデン政権のウクライナ政策を批判したものであるが、良いポイントをついているように思われる。ウォールストリート・ジャーナル紙も同趣旨のボルトンの論説と社説を掲載していたが、ワシントン・ポスト紙も同じ方向の論説を掲載したということになる。

 ウクライナ戦争を第3次世界大戦にしないというのは米国の当初からの方針である。それはそれで適切な考え方であろう。ウクライナ戦争を「制限された戦争」にするのは適切なことである。しかし、上記の論説等も指摘する通り、バイデン大統領はその考え方を実際の政策にする中で、ロシアの反応を気にし過ぎである。

 ウクライナがモスクワなどへのドローン攻撃をしているが、それに対するロシアの対応は第3次大戦を引き起こすような激烈なものからは程遠い。

 F16供与への躊躇、ATACMS供与の停止、黒海での北大西洋条約機構(NATO)によるエスコートの不実施は、ロシア領攻撃やNATO・ロシアの直接対決を避けようとするものであるが、これらがロシアの反応に対する過剰な予測に基づいているとのブートの考えはおそらく正しい。ウクライナ戦争を第3次大戦やNATO・ロシア直接対決にしたくないのはロシアも同じであり、ロシアに勝ち目がないことはプーチンも認識していると思われる。

早期の戦争終結が理想

 ウクライナ戦争は今のところ長期化が予想されるが、その間、米国をはじめとする西側諸国がウクライナ支援疲れになる危険も考えなければならない。特に、米共和党内で孤立主義が再び頭をもたげ始めている。トランプ再選さえありうる。

 多少のリスクは覚悟しつつ、この戦争が短期間で終了に向かうように対ウクライナ武器供与を進め、ウクライナの反転攻勢を成功に導くのが最良の策であると考えられる。ATACMS供与はそのためのよい施策である。

 ロシア本土をウクライナが攻撃対象にしているのは、ロシア国内でウクライナ戦争をロシア国民に身近なものと感じさせ反戦の動きを勢いづかせるプラスの面と、対ウクライナ戦争を祖国防衛戦争としてクレムリンが宣伝に利用するマイナスの面の両面がある。いずれの効果が大きいかは判断が難しい。しかし、このリスクは現状ではとるべきリスクであろう。

 ロシアがこの侵略戦争で何らかの利益を得るようなことは決して許してはならない。そういうことは台湾その他の問題における中国の計算にも影響を与える恐れがある。

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