薄煕来・前重慶市長の裁判について、これは公正な法による裁判のように装っているが、実態は共産党による裁判であり、基本的には政治のショーである、との趣旨の論説が多く発表されていますが、その中から、香港中文大学非常勤教授Willy Lam の論説(8月20日付WSJ掲載)と、8月22日付WP社説をご紹介します。
まず、ラムの論旨は以下の通り。
すなわち、中国の公的メディアは、薄に対しあまり重い刑に処すことがないことを匂わせている。薄は収賄、横領、職権乱用で起訴されているが、収賄については前任地の大連時代のものに限定されており、重慶時代のものは全く含まれていない。
薄は比較的軽い刑を受けるのではないか。その理由は、第一に、「赤い貴族」のメンバーたちは特権をもっており、不文律の「相互保護規定」によれば、政治局員は原則20年以上の重い刑に処せられることはない、とされていること、第二に、共産党が団結を保っているという外面を取り繕う必要があることである。
薄の失脚の主たる理由としては、薄が胡錦濤の流れを汲む共産党青年団の派閥に反抗したこと、さらに、薄は同じ太子党のメンバーである習近平とはライバル関係にあると見られていることが挙げられる。しかし、薄の後ろ盾に江沢民がいることなどを考えれば、「団結した共産党」という外見維持のためにも、特別の厳罰に処す必要はないだろう。
今回の裁判は公正な法による裁判ではなく、外観にかかわらず、実際には共産党が判決の決定権をもつことに変りはない。やっと裁判が開けるようになったのは、党内の実力者たちのあいだにコンセンサスがなんとか出来上がったからだろう、と述べています。
次に、WP社説の論旨は以下の通り。
すなわち、中国では裁判と呼んでいるが、実態は法廷内に弁護士や検察官がいても、あくまでも芝居(ショー)であることに変りはない。中国は法治国家ではなく、共産党は法律の上にある。
裁判初日に関する限り、薄は驚くほど好戦的であった。かつて自分が供述した調書内容を不当な圧力によるものであったとして否認し、妻の証言内容(録画)を馬鹿げたものとして非難した。興味深いショーではあるが、判決はカーテンの裏で党の大物たちによって決定されるのだろう。