北朝鮮は、他国、特に、協力関係にあるイランにとって、手本になっている。イランは、北朝鮮を見習い、小規模の核兵力保有への意思を示すだけで、現実の核保有に匹敵する効果を挙げつつある。イランは、厳しい制裁にも屈しない。国際的核査察官を騙し、査察に抵抗するすべも学んでおり、更に、核の運搬手段としてのミサイルの重要性も理解している。米国が当該地域からの撤退を急いでいる中で、イランは、核の敷居を超えること無しに戦略的利益を確保しつつある。
このままでは、核不拡散の為に、イランの核保有を阻止するとのオバマ政権の方針が損なわれることになる。オバマ大統領が伝統的なバランス・オブ・パワーの議論よりも、イランの核施設に対する先制攻撃論を優先してきた以上、信念に従って行動すべきである。しかし、これまでの動きを見る限り、オバマ政権は、そのような行動に出そうもない。
北朝鮮の金一族は多少狂ってはいるが、馬鹿ではない。合理性が無い訳ではなく、精神療法の言い方で「別の意味で合理的」なのである。金一族は核能力への投資により大きな利益を得ている、と述べています。
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上記の指摘通り、核・ミサイル開発が金一族による支配の延命に役立ってきたことは事実であり、また、イランが核の敷居を超えない範囲で北朝鮮のやり方をまねて利益を得ていると言うのも、一つの見方です。オバマ政権がイランに対する先制攻撃には踏み切らないとの予測もその通りでしょう。
8月21日、韓国の柳吉在統一部長官が、朴政権の「朝鮮半島信頼プロセス」の原則と重点課題を説明しました。統一部は、金剛山観光について観光客の安全などを確保した上で再開する方針を明らかにし、また、非核化の進展や信頼構築に合わせ、北朝鮮の電力、交通等のインフラ拡充、北朝鮮の国際金融機関への加盟支援、北朝鮮経済特区への進出模索、南北交流等を推進するとしています。統一部は、「非核化の進展が無いまま南北関係の発展だけを進めることも望ましくないが、南北関係の全ての事案を核問題と関連付けてアプローチすることも望ましくない」とし、非核化前であっても交流や人道的支援などを通じて信頼を構築し、非核化の進展に合わせ、大規模な経済協力事業も本格的に推進するとしています。
韓国政府が非核化よりも南北関係強化を重視することとなれば、安保理制裁決議の空洞化につながる恐れがあります。北東アジアの安定の為には、北朝鮮の非核化が不可欠であることを忘れてはならず、非核化の確約が無いまま、経済協力を推進することは、将来に禍根を残すことになるでしょう。
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