2024年12月3日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年10月11日

 フィナンシャル・タイムズ紙のMax Seddonモスクワ支局長が9月21日付け同紙に、「ナゴルノカラバフのアルメニア兵力はロシア仲介の停戦で解散することに同意。降伏は領域に対するアルメニアの掌握への破滅的な打撃たりうる」との解説記事を書いている。その要旨、次の通り。

(Tomas Ragina/NatanaelGinting/gettyimages)

 9月20日、ナゴルノカラバフのアルメニア兵力は、アゼルバイジャンによる24時間の攻撃(少なくとも32人が死亡、200人が負傷)の後、ロシアが仲介した停戦で解散することに同意した。

 この降伏は、南コーカサス山脈の領土(アルツァフ共和国:国際的にはアゼルバイジャンの一部と認められているが、ソ連崩壊以来事実上アルメニアが掌握してきた)へのアルメニアの掌握に対する破滅的な打撃になるだろう。

 トルコが支援するアゼルバイジャンはイスラム教徒が多数を占める専制国家であるが、2020年の戦争でアルメニアの飛び地の一部とその周辺領域を支配下に置いた。この戦争でロシアがキリスト教の同盟国の支援をしなかったことがこの地域でのモスクワの影響力の喪失の始まりになった。

 昨年のウクライナ侵攻後、ロシアの平和維持軍はアゼルバイジャンがこの地域とアルメニアを結ぶ唯一の道路を封鎖し、食料不足,医療品不足、停電が発生したのに何もしなかった。 

 モスクワによって作られた真空に踏み込もうとする最近の米欧の試みも打開をもたらさなかった。

 アルメニアとロシアの関係は汚職摘発ジャーナリストであったパシニャンが18年の民主的革命で首相になった後、悪くなりはじめ、20年戦争でロシアがアルメニアを助けに来なかったことでさらに悪化した。

 ロシアはパシニャンが共同演習のために米軍を招き、ウクライナに人道援助を送ったあと、アルメニアの大使を呼びだし注意した。

 クレムリンはロシアの平和維持軍がナゴルノカラバフのアルメニア人を守り、飛び地への経路を開いておくとの義務を果たしていないとのアルメニアの主張に反論している。

 ペスコフ報道官は9月20日、「このような非難は全く根拠がない」と述べ、今年初めにパシニャンがアルメニアは1991年ソ連が崩壊した時のアゼルバイジャン国境(ナゴルノカラバフを含む)を承認する用意があると述べたことに言及した。彼は「これはアルメニア側がカラバフをアゼルバイジャンの一部と認めたことを意味する。法的にはアゼルバイジャン共和国は自分の領土で行動している」と述べた。


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