2024年7月16日(火)

勝負の分かれ目

2023年10月12日

まだまだ見たい「球界きっての」ライバル

 岡田氏は10年から3シーズン、同じ関西に本拠地を置くオリックス・バファローズの監督に就任したが、結果を残すことはできなかった。その後は評論家として「監督の目」を培う我慢の日々を過ごした。一方、原氏も2度目の監督を15年限りで勇退したかに見えたが、高橋由伸監督でつまずいた巨人から届いた3度目のオファーを引き受けた。

 近年はすっかりメガネ姿も板についた原氏だが、初めて「目の衰え」を聞いたのは15年前の08年リーグ優勝目前の東京ドームのベンチだった。報道各社のキャップクラスの雑談に応じてくれたとき、「目が悪くなってきた」と語り、東京ドームのベンチから外野にある看板の文字がぼやけてしまうと嘆いていた。

 「来年はメガネを作らないといけないな」。すぐには想像できなかったが、翌年からは違和感がなくなっていった。

 盟友がGとTのユニホームを身にまとって指揮官を務めるのは、今季が最後だっただろう。しかし、原氏の野球観は、後を託された阿部新監督に大きな影響を与えたであろうし、岡田さんも年齢的に、この先も長く指揮を執ることは難しいだろう。阪神のベンチにも、選手時代からかわいがる今岡真訪打撃コーチがいる。今季は、リーグ優勝に導いた手腕を間近で学ぶ機会になった。

 今の巨人と阪神には、両者のような良きライバル関係にある選手は見当たらない。背景には、時代の変化もある。

 04年の球界再編を機に、日本のプロ野球界は地域密着に舵を切り、ファンには、全国区の巨人よりも地元のチームを愛する地域性が生まれた。「東の巨人、西の阪神」というよりは、12球団がそれぞれのフランチャイズで輝きを放つ。さらには、米大リーグへの挑戦が当たり前となったことも大きいだろう。

 今季からの監督復帰に際し、巨人のことは「そら、意識するよ」(10月5日配信のスポーツ報知ウェブ版)と語っていた岡田氏。10月4日配信の日刊スポーツウェブ版によると、この日のレギュラー最終戦後、原氏の監督退任について報道陣の取材に「思い出なんかないわ。(まだ一緒にやりたかったのでは?)「何がやりたいんや(笑い)。やりたいとかやりたくないとかじゃなくて、勝負やんか」と独特の言い回しで惜別の言葉を送ったという。

 「勝負」という言葉に、ともに一時代を歩んだライバルとの関係が凝縮されているようにみえた。

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