2024年12月10日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年10月16日

 国連総会の機会にバイデン米大統領は中央アジア5カ国との首脳会談(C5+1)を開催した。これについて、この地域を専門とする研究者のカムラン・ボハリが、9月15日付けウォールストリート・ジャーナル紙掲載の論説‘The U.S. Should Upgrade Its Central Asia Strategy’で、米国はこの際カザフスタンをはじめとするこの地域に対する戦略を更に強化すべきであると論じている。要旨は次の通り。

ニューヨークの国連代表部にて、米国と中央アジア5カ国による史上初の首脳会談(C5+1)が開催された(AP/アフロ)

 米国にとって初めての中央アジア5カ国(カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギス、トルクメニスタン)とのサミット(C5+1)は、長い間待たれていたものであり、この枢要な地域における重要な一歩となる可能性がある。

 米国のこの地域への影響力は、歴史的にロシアや中国よりもはるかに劣っているが、ウクライナ戦争によるロシアの弱体化と中国の景気後退は、米国にとって中央アジアとの関係を緊密化し、これまで孤立していたこの地域を西側諸国に引き寄せ国際社会に招き入れる好機である。

 この地域の各国は、国内的、政治的、経済的な変革期を迎えており、地域最大の経済大国であるカザフスタンは、切望されている改革に向けて先頭に立っている。さらに、カザフスタンは、核不拡散、テロ対策、紛争解決、国際協力など、さまざまな分野で国際的なプレーヤーとしての地位を確立しつつある。

 トカエフ大統領は昨年秋、マルチベクトル外交ドクトリンを宣言した。つまり、ロシア、中国、米国、欧州連合(EU)など、世界のあらゆる主要国との緊密な関係を目指すということだ。

 カザフスタンは、米国がウクライナでの和解を模索し、戦後の不透明な時代におけるロシアとの関係を管理するのを助けることができるし、同様に、中国との競争激化への対応も助けることができる。

 カザフスタン政府がこのような役割を果たすためには、ロシアと中国からの圧力に耐えるための2つの面での米国の支援が必要である。第一に、米国はカザフスタンの政治改革を支援し、メディアの自由を強化すべきだ。カザフスタンの民主化は、他の中央アジア4カ国にとり、中国、ロシア、アフガンの影響から脱するためのモデルとなりうる。

 第二に、カザフスタンはカスピ海横断国際輸送回廊(通称:中央回廊)を通じて、この地域と世界経済をつなぐ役割を担っている。この輸送大動脈は、パイプライン、鉄道、高速道路、光ファイバーケーブルなどのチャンネルを通じて東西を結ぶ。この回廊は中央アジアの経済発展を促進し、国際的なエネルギーやその他の貿易の流れに貢献するだろう。

 米国は、投資、貿易、技術、グローバル・リーダーシップを通じて、回廊の成功を支援することができる。より広く言えば、米国は、中国やロシアを追い抜く戦略の追求により、中央アジアへの戦術的アプローチをアップグレードする必要がある。


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