10月号掲載の「加速するヤングケアラー支援 理念だけでは語れない(前編)」では、一筋縄ではいかないヤングケアラー支援の現実を提示した。状況を打破するには福祉政策にとどまらない視点が不可欠だ。(後編)では解決の糸口を探る。
メディア報道によってつくられるヤングケアラーのイメージは、年老いた祖父母や障害のある兄弟を支える、けなげな子どもである。これに対して、現場の実感は「無職または非正規、孤立、外国籍、精神疾患」といった属性を持つ「ひとり親」の子どもたちがその典型である。こうした報道と現実とのギャップは、関係者の戸惑いを生む。最も多い受け止め方が、「親がもっとしっかりしていれば、子どもは苦しまずに済むのに」といったものである。これは一面の真実である。
確かに、親が安定した仕事を見つけ、地域のつながりをつくり、病気にならない健康的な生活を維持すれば、子どもの苦労は少なくなるかもしれない。
しかし、こうした「あるべき姿」を説くことで現状が変わることは、まずない。むしろ、親は批判を恐れて孤立を深め、どうしようもない憤りを子どもにぶつけることさえある。ヤングケアラーの支援を考えるときに、「本来は親が担うべき仕事を、どこまで公が代替するのか」という問いから目を背けることはできない。
こうした問いかけに、政府や地方自治体などの公的機関や、子どもとの接点が多い学校はどうしても及び腰になる。自らの責任を問われかねないからである。では、問題解決の糸口はないのか。そんなことはない。既存の福祉政策の枠組みを超えた新しい取り組みが、静かに動き始めている。
広がりを見せる
ひとり親家庭への食支援
コロナ禍の2021年12月某日、首都圏を中心に活動が広がる「子育てフードパントリー」の現場を取材するため、筆者が埼玉県内でトヨタ車を販売する「埼玉トヨペット」(さいたま市)のサービスセンターを訪ねたときのことである。現場には、次々と親子連れが姿を現し、両手に抱えきれないほどのレトルト食品や米、調味料、お菓子などの生活必需品が社員から手渡され、笑顔で帰宅する様子が見られた。