世界的な経営理論にも通じる
終章では商人の態度について触れる。「勇気が困難に克ち 忍耐が不況を切り抜け 知恵が店を栄えさせ、愛情が繁盛を続かせる」との言葉は、コロナ禍で苦しんだ経営者の琴線に触れる内容であろう。いつの時代も一寸先は闇だが、不況にある時こそ知恵を絞り、行動することで成長するという言葉は、商人への大いなるエールである。
本書に紹介される多くの言葉は、日本のみならず世界にも通用する哲学である。ピーター・ドラッカー(マネジメント)やフィリップコトラー(マーケティング)、マイケル・ポーター(競争戦略)ら高名な経営学者も顧客の創造、顧客の理解、顧客を喜ばせることなどの重要性を説いており、倉本の指摘と本質的に通じ合う。従業員を大切にする米ウォルマートの哲学も然りである。
言葉の中には時代がかった表現も一部にあるが、その点を差し引いても、目指す商人像は正統的な姿であり、大半がいまの時代にも通用する商人哲学だ。多くの経営者が勇気をもらえる一冊である。
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