2023年10月20日付けの英フィナンシャル・タイムズ紙に、同紙米中関係担当記者のデメトリ・セヴァストプロが「ペンタゴンは中国が核兵器増強を加速させていると非難。議会への新報告書には中国が以前の予測を超えてきていると記述されている」との記事を書いている。
ペンタゴン(米国防総省)の新報告書によると、中国は核兵器庫の拡大を加速させており、米国を打撃する通常兵器のICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発を探求している可能性がある。
議会に提出された中国軍事力についての年次報告書では、「通常兵器のICBMが米大陸、ハワイ、アラスカの目標を攻撃することを可能にするだろう」と述べられている。
報告書は、中国の核兵器の数は2023年5月までに500発に到達したと述べ、2030年までに1000発以上の核兵器弾頭を持つと予測している。
ウクライナやガザでの戦争にかかわらず、米国の政策決定者は中国を最大の安全保障上の脅威と考えており、人民解放軍(以下PLA)についてのペンタゴン報告書はホワイトハウスと議会で支出の優先順位を考える予算策定者によく読まれている。
PLAは宇宙での能力にも多大の投資をしている。ペンタゴンは、中国は2022年に、60回以上(5年前と比較し3倍増)のロケット打ち上げに成功し、2017年の5倍増になる180以上の衛星を打ち上げたと言う。
報告書は、中国はPLAを使って米国や同盟国に対し威圧的な行動をしている、外国の航空機や船舶に対する危険な行動や相手の航空機の近くに金属片や照明弾を放出するなどしており、過去2年間で中国は米国と同盟国の航空機に「危険で威圧的な行動」を300回以上行ったとしている。
報告書は、北京が軍と軍との通信チャネルをペロシ下院議長の昨年8月の訪台後に止めたまま再開を引き続き拒否しているとしている。最近、米閣僚数人が中国を訪問し、非軍事面での雪解けの印が見られている。
もし習近平が来月のサンフランシスコでのAPECに来るならば、米中首脳会談がありうるが、その準備のために王毅外相が今月末にワシントンを訪問する。
ペンタゴンはPLAがAIとビッグデータを使い、米国の脆弱性を探しているとも指摘している。今週初め、FBIのレイ長官とFive Eyes(米英豪加NZ)のカウンターパートは、中国が軍事目的でAI技術を盗取しようとしていると警告した。
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毎年、ペンタゴンは議会に「中国の軍事力」という報告書を出すが、今年の報告書は10月19日に発出された。上記の記事は、その報告書の内容を報じたものである。
今年の報告書の特徴は、中国が核戦力を増大させていることを大きく取り上げていることである。いまの中国の保有する核弾頭は500発であるが、2030年には倍増し、1,000発になると予測している。核兵器格納庫の数が増えていることは衛星画像でわかるので、そこから推計したものと思われる。