2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年10月4日

 2023年9月6日付Foreign Policy誌は「アジア版NATOは決して無いと言うなかれ」とのマイケル・グリーンの論説を掲載した。アジア版NATOは今の目標ではないかもしれないが、将来の選択肢として可能性を閉じるべきではない、それは中国(習近平)次第だと論じている。

(WebTools/Andrea Nicolini/gettyimages)

 インド太平洋地域でのバイデン政権の同盟国パートナー国との連合形成は最高潮である。クアッド(日米豪印)首脳会合を定期化し、北大西洋条約機構(NATO)新戦略概念で中国を戦略的優先事項と指定し、NATOは豪州、日本、韓国の首脳を首脳会合に招待した。

 先月、バイデンは岸田文雄首相と尹錫悦大統領を招待し、全ての安全保障危機に際し相談するとの誓約を発表した。首脳会合後、サリバン補佐官は、目的は太平洋地域で新たなNATOを作る事ではないと述べた。

 米国とパートナーは、今ではアジア版NATO推進を意図していないかもしれない。が、地域の地政学的情勢は過去70年間で最もその選択肢をあり得るものにしている。

 その第一は、米国が海洋領域での優位性を喪失しつつある点である。米国と同盟国は冷戦中にNATOが欧州で直面したのと同様の量的脅威に直面している。第二に、米国の同盟国パートナー国に対する中国と北朝鮮の直接的軍事脅威が増大している点である。

 これに対し、日本と豪州は変化した。日本は憲法9条の解釈を変え軍事的即応性を高め米国との共同行動を優先し、日本が中国との戦略的緊張関係の最前線だと認識している。

 豪州は公式警告時間を10年から即時に短縮した。中国の戦略が米国の拠点への幅広い攻撃を想定しているようなことから、米国の同盟国は紛争に巻き込まれる可能性が高いとしている。これはNATOと非常に似た構造だ。

 一方、現在の複雑な戦略環境を反映しアジア版NATOへの反論もある。今日、中国は地域のほとんどの国の最大の貿易相手で、各国は将来的には中国とより建設的な関係を築くことが目標で、NATO的同盟はその可能性を無くすとみている。

 しかし決してアジア版NATOが無いと言うなかれ。もしも破壊的地域戦争抑止への懸念が、貿易、地域的団結、戦略的自主性の維持への懸念を上回れば、現在の米国と同盟国間の継ぎ接ぎ的取極めが集団安保に動く可能性はある。これは、「米国」の「目標」である必要は無いが、同盟の優先事項を静かに導いていく際の「選択肢」の一つで有り続けるべきだ。そして太平洋版NATOが最終的に現実となるかどうかは、習近平次第だ。

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 上記グリーンの最後の文章「これは、『米国』の『目標』である必要は無いが、同盟の優先事項を静かに導いていく際の『選択肢』の一つで有り続けるべきだ。そして太平洋版NATOが最終的に現実となるかどうかは、習近平次第だ」には、全面的に賛成できる。特に末尾の一文の含意は大きい。


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