2024年6月16日(日)

バイデンのアメリカ

2023年11月7日

 さらに、保守反動派が主導する下院共和党は先月30日、すでにバイデン政権が議会に要請済みの対イスラエル、ウクライナ支援などを盛り込んだ追加歳出案(1060億ドル)とは別に、支援をイスラエルのみに限定した独自の法案(143億ドル)を発表した。

 これは、就任直後の会見で「対イスラエル、ウクライナ支援分離」に言及したジョンソン下院議長、そしてトランプ氏の主張をそのまま反映したものであり、ホワイトハウスはただちに「政争の具にするものだ」として共和党案を厳しく非難する声明を出した。

 しかし、共和党多数の下院は去る11月2日、賛成多数で同法案を強行採択した。このため、バイデン大統領はただちに拒否権発動の意向を表明、超党派的対イスラエル支援は当面、棚上げされた格好となっている。

難しいウクライナ支援との兼ね合い

 一方、民主党が過半数を占める上院では、ミッチ・マコーネル院内総務はじめ共和党重鎮議員多数も民主党側と同調し、「イスラエルとともにウクライナに対する支援継続も緊急課題だ」として、政府提出の追加歳出案を強く支持しており、近く法案が提出され可決される見通しとなっている。

 この結果、今回のパレスチナ危機に端を発した対イスラエル支援をめぐっては、与野党の対立のみでなく、共和党側でも、上下両院間での亀裂を生じさせ、混迷は深まるばかりだ。

 ただ、バイデン政権にとって気がかりなのは、イスラエル支援をめぐる国内対立が来年大統領選に及ぼす影響だ。

 国際的データ・インテリジェンス企業「Morning Consult」が先月25日、実施した米国世論調査結果によると、バイデン大統領による最近のイスラエル・パレスチナ紛争への取り組みに対する支持率は42%だったのに対し、不支持は43%で、ほぼ拮抗状態だった。

 同時に、下院共和党が提出した143億ドルの対イスラエル支援法案には、過半数に近い47%が支持する一方、600億ドルの対ウクライナ支援についは、46%が不支持だった。

 この調査結果を見る限り、米国民の多くがウクライナに対する支援に慎重になりつつあると同時に、イスラエルに対してはかなり好意的に見ていることを示している。

 下院共和党が提出したイスラエル限定支援法案は、まさにこうした最近の世論動向を踏まえたものだった。しかも下院共和党は、大統領が限定支援法案を否定していることを逆手に取り、早速「イスラエルに対する背信行為」だとして、今後の選挙戦の争点とする構えを見せている。

 もともと民主党としては、イスラエルに対する肩入れに関しては以前から、法案審議などを通じ共和党以上に意欲的な姿勢で臨んできた実績があり、バイデン大統領自身も、過去36年の上院議員時代を通じ一貫して熱心なイスラエル支持者として知られてきた。それだけに、今回の下院共和党の〝世論かく乱戦略〟には、理路整然と反論していく構えだ。


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