2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年11月13日

 ウォールストリート・ジャーナル紙の10月24日付社説‘Biden’s Red-Line Moment With Iran’が、イランは代理勢力に中東の米軍を攻撃させることで米国の出方を試しているが、米軍に損害が出ていないからと言って放置せず、イランの代理勢力の米軍への攻撃に対してバイデン政権が断固対処することで結果的に域内での米国の抑止力を回復させることになる、と言っている。要旨は次の通り。

(rarrarorro/STILLFX/gettyimages・DVIDS)

 10月24日、ブリンケン米国務長官は、イランとその代理勢力が米軍を攻撃すれば速やかかつ決定的に報復すると警告したが、この警告はその前のバイデン大統領の曖昧な警告より明確だった。しかし、バイデンは自ら引いたレッド・ラインを実行するのだろうか。

 ブリンケン国務長官の発言は、仮に米軍が攻撃されるならば、米国は軍事的に報復するという意味だ。多くの報道はイランの代理勢力が中東の米軍の拠点をさらに攻撃しようと計画しているとしている。しかし、果たして米国の素早くかつ決定的な反撃が行われるだろうか。

 バイデン政権は、レバノンとシリアのイランの代理勢力によりイスラエルに対する第2戦線が開かれるのを阻止したい。他方、イラン(の代理勢力)により域内の米軍に対して多くの攻撃が行われているにもかかわらず、米軍に被害は出ていない。しかし、だからと言って米国が反撃しなければ、イランのブラフに負ける事になる。

 ホワイトハウスは、出来る限り反撃を避けたいが、そのことにより何時かイランかその代理勢力が米国人を殺してしまうリスクがある。そのような事態になれば、米国はより大規模に軍事力を行使しなければならなくなり、政治的なダメージも大きい。さもなければ、米国はイスラエルを助けるためにヒズボラを敗北させなければならなくなるだろう。

 イラン側は代理勢力を使って米国の覚悟を試している。イランが報いを受けることなく代理勢力が攻撃を続ければ続けるほど、イランはより大きな賭けに出ようとするであろう。バイデンが理解すべきパラドックスは、中東における抑止力としての米国を回復することが域内を最も安定させるということである。

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 上記の社説が出た後、10月26日に米軍はシリアにおけるイラン系民兵の拠点を空爆した。この報復爆撃は直接的には10月18日にシリアで米軍兵士が24人負傷した事に対する報復と思われる。


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