不振は東京にとどまらない。やはり先月に行われた埼玉・所沢市長選。自公推薦の現職が無所属の新人に敗北、長崎大村市長選では自公推薦の新人が現職に挑戦したが及ばなかった。
おもえば、地方選の退潮は2022年12月、保守王国・茨城の県議選で、県連幹事長を含む現職10人が落選して衝撃を与えたのが〝序曲〟だった。
この時は、秋口から閣僚4人が相次いで辞任、首相の支持率が3割台にまで落ち込んだことが影響したとみられていたが、あたかも、その後遺症が継続しているかのような様相だ。
地方選、しばしば永田町の政局を左右
最近の敗北の原因については自民党内でさまざまな検討、分析がなされているようだが、東京については、自公の選挙協力が一時とりやめとなった影響が大きかった。立川市長選、同都議補選で公明党はいずれも自主投票にとどめた。
全国的には、世論調査での内閣不支持理由が、政策、実行力不足への失望が大勢であることを考えれば、物価高、マイナンバーカードをめぐる不手際など身近な問題での不満が有権者の自民離れを引き起こしたとみるべきだろう。
地方選挙の結果は過去、しばしば永田町の政局を左右してきた。
1989年7月の東京都議選で自民党は20議席減、その3週間後に投開票された参院選では一挙に33議席を失い、宇野宗佑首相が在任わずか2カ月で退陣した。
最近の例では一昨年2021年の横浜市長選挙。自民党候補は現職閣僚を辞職しての異例の出馬だったが、立民など推薦の候補に敗れた。菅義偉首相(当時)の地元で前大臣が敗北を喫した衝撃は大きく、求心力を失った菅氏は9月の総裁選への出馬断念に追い込まれた。
今後の政治日程を見れば11月26日には、自公推薦の現職が再選をめざして新人3人の挑戦を受けている高知県知事選、現職に自公推薦の新人が挑戦する高知市長選がそれぞれ行われる。
辞任した木村弥生氏の後任を選ぶ江東区長選も12月10日に予定されているが、自民党の方針は未定だ。
不人気を考えれば、地方とはいえ民意が反映される選挙は、政権にとってきびしい。結果によっては岸田おろしの狼煙があがるかもしれない。