2022年8月15日(月)

World Energy Watch

2013年10月4日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 もう一つは、欧州には送電線網があるのに、なぜアジアでできないのかとの主張だ。分かり易く言えば、日本の新幹線が何故サハラ砂漠からジンバブエまでのアフリカ中央部でできないのかと訊くのと同じだ。経済発展の段階も、電力需要量も、無電化地区の有無も違うから欧州でできることでもアジアではできないのだ。経済人ならこんな簡単な理屈は分かるに違いない。

 簡単に言えば、孫は確実に儲かることだけに取り組み、さらに、国境を跨ぐ送電線を国に敷設させ、アジアの途上国から水力主体の安い電気を日本に送り、儲けようとしているだけではないのかとの疑問が生じる。

「モンゴルの電気を日本に送る」馬鹿馬鹿しさ

 アジアの広い地域でも夜になる時間は大きく変わらないので、太陽光発電は使えない時間帯があるが、風力は広い地域全体で凪ということはないだろうから、日本が凪でもモンゴルで発電が可能かもしれない。しかし、このアイデアには大きな問題が二つある。実現は無理だ。

 朝日の紙上では、孫はモンゴルの風力発電の電気は日本に送電しても原子力より安いと主張している。風力で発電するコストと送電コストが原子力よりも安くなることはないと思うが、問題はコストだけではない。仮にコスト競争力があっても日本に送電されてくることはないだろう。発電量と需要量の関係を考えれば分かる話だ。モンゴルの総電力消費量は年間42億kWhだ。国内の発電だけでは不足するので約3億kWhの輸入もしている。1人当たりの年間消費量は1300kWhだ。全消費量は日本の200分の1、1人当たりは5分の1以下だ。

 これからモンゴルでは電力需要量は急増する。世界銀行のデータによると、モンゴルでは人口の約14%の人が電気のない生活をしている。自国に無電化地区を残し、自国の急増する電力需要を満たさずに輸出をすることがあるのだろうか。国内向けより高い買い取り価格を提示し、札束で頬を叩くような真似をして電気を買えば、多くの地元の人を敵に回すことになるが、それでも日本に送れば儲かるのであれば、孫は実行するのだろうか。

 さらに問題がある。モンゴルでは道路、送電線は整備されていない。風力発電設備は巨大だ。道路が整備されていない国では設備の輸送に困難が伴う。そのためのインフラも誰かに作ってもらうのだろうか。発電設備からの国内の送電線の整備も問題だ。

欧州でできてもアジアではできない理由

 送電線の問題に関しても欧州ではできるのに、アジアではできないのは疑問と孫はしているが、できない理由は明らかだ。欧州とアジアの国では発電量と需要量が大きく異なるためだ。欧州各国は送電線を通して電力の輸出入を行っている。簡単に言えば、お互いにコストの安い電気を利用し、また再エネのバックアップとしても他国の設備を利用している訳だ。例えば、デンマークでは風が吹きすぎれば隣国に電気を売り、凪の時には隣国から電気を買っている。

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