2024年6月22日(土)

解体 ロシア外交

2013年10月7日

 そんな北極海航路が温暖化で世界の注目を浴びるようになった。大陸沿岸の海氷後退により、カナダ北部の多島海を通る北西航路と、シベリア沿岸の北方航路の両方が開通する期間が長くなり、開通する幅も広くなったからである。ただし、開通期間は夏場の約4カ月に限られ、その期間でさえも、砕氷船の支援が必要である。それでも、北極海航路を利用することで、航路がかなり短縮できるケースも多く、時間や燃料を中心とした諸コストを削減でき、多くのメリットを享受できる。

 北方航路を巡る利権の争奪戦は密かに加熱し始めている。実際、北極海航路を航行する船舶数は年々増加しており、国際海事機関(IMO)によると、2010年は4隻だったが、11年に34隻、12年は46隻で、今年は昨年を上回る見通しだという。

「海底にロシア国旗」で関係各国を刺激

 第二に、北極圏には世界の未発見原油の10%、天然ガスの30%、さらにニッケル、コバルト、金、ダイヤモンドなどの豊富な天然資源や鉱物が眠るといわれる。北極海の海氷が融解すれば、これら天然資源の採取が可能となる。そのため、大陸棚の領有権を巡る争奪戦も激しさを増してきている。最も活発な動きを見せているのは、やはりロシアだ。

 ロシアは200海里の排他的経済水域(EEZ)を越える北極海の中央部の海底が、自国の大陸棚であると主張する申請書を2001年に国連の大陸棚限界委員会(CLCS)に提出した。また、この際、オホーツク海(北方領土問題と関わる)、ベーリング海、バレンツ海についても同様の申請をしていたが、データ不足や関係諸国との調整の必要ありとのことで、全て却下されていた。その後もロシアは大陸棚の獲得に躍起になっていった。

 2007年8月には、計6人を乗せたロシアの小型潜水艇ミール1号と2号が北極点周辺の海底に到達し、ロボットアームで土壌採取などの探査を行なった他、深さ約4300メートルの海底にさびにくいチタン製のロシア国旗を立てた。北極点付近の海底に有人潜水艇が到達するのは世界史上初であった。その旗は、国際法上何の意味も持たないが、ロシアの資源開発権の主張の大きなシンボルとして、関係各国を刺激した。

 この調査を受け、同年9月20日には、ロシア天然資源省が収集データから「同海域の海嶺がロシア領の延長だという主張を裏付ける資料が見つかった」と発表し、国連への領有権主張の申請の補強材料にすることも明らかにした。

 さらに、2012年にはロシア人科学者は世界に先駆けて深海ボーリングを行なったのである。探査用のロシア海軍の潜水艦が約2キロの深さに潜り、試料の採取場所を特定し、ボーリング用装置によって採取したという。ロシアはこの研究作業を入念に進め、2013年末までにCLCSに再度、申請書を提出するという。なお、国連がその申請を受理した場合、ロシアの領土には、120万平方キロメートルに及ぶ豊かな天然資源を持つ領域が加わることになる。海底が陸地からの延長である大陸棚と認められれば、海底の資源の研究権や開発権が確保できるため、ロシアが躍起になるのも当然だろう。こうしたロシアの動きによって、各国も「科学的根拠」にこだわるようになっていった。


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