2024年7月16日(火)

解体 ロシア外交

2013年10月7日

 そして北極海航路で中継拠点としての意味も持つアイスランドに接近、今年4月には、中国にとって欧州国家としては初の自由貿易協定(FTA)を締結するなど、北極海諸国への接近にも余念がない。

権益保持のため軍事的対策の強化

 そのような中、ロシアは本気で北海圏の権益を保持するための対策を強化しつつある。

 冒頭で触れた基地の復活や、過去にもたとえば2012年9月には、ロシアの軍・政治指導部が、北極海のノバヤゼムリャ群島にある元核実験場の防衛措置を強化し、防空軍部隊と全天候型航空機を配備、さらに群島周辺の海域には北方艦隊の艦船が戦闘態勢を敷くことが報じられた。ロスアトム(国営原子力企業)は、核兵器の信頼性と安全性を判定するため、同地で核兵器の臨界前核実験を再開する可能性があることもほのめかした。

 実験基地であるノバヤゼムリャは確実な防衛態勢下に置かれる必要があり、同地のロガチョボ飛行場に迎撃戦闘機ミグ31の編隊が配備されることとなった。これらは、ノバヤゼムリャのみならず、北からの攻撃からロシア国境を守るだけでなく、もちろん北極海防衛の意味も持っている。ソ連時代およびソ連解体後も1993年までは、同飛行場に迎撃機が配備され、空から核実験場を防衛する任務を果たしていたが、その機能が復活されることとなったのである。

 さらに、2012年から、北極海では部隊の戦闘訓練と関係した措置が再開された。それはテロ攻撃を想定した海兵隊上陸作戦を想定している。2012年の同訓練は、7000人超の人員、潜水艦を含め20隻以上の艦船、約30機の航空機、150台の戦闘車両が参加するという大規模なものとなった。

世界最大の原子力砕氷船を建造予定

 また、昨年12月20日には、プーチン大統領が「我々は砕氷船団を増強する。これは最も重要な動脈(北極海航路)を発展させるという真剣な意思表明だ」と記者会見で発表し、ロシアの権益を守るために北極海航路の開発と新砕氷船建造を進める意思を表明した。ロシアは6隻前後の原子力砕氷船を保有し、北極海を通る船のエスコートや北極圏開発などに運用しているが、全てソ連時代に建造または計画された船であるため老朽化が進んでいる。

 そこで、北極海航路での船舶増加や資源開発の進展を睨み、新たに3隻が造船されることとなったのである。その内の一隻は、全長約173メートル、幅約34メートルで、コンテナ輸送用の特殊な船を除けば、ロシアが保有する世界最大の原子力砕氷船「戦勝50年」をもはるかにしのぐ、通常の原子力砕氷船としては世界最大の大きさになるという。建造費は約1070億円に及ぶという。同船は、厚さ4メートルの海氷も割ることができ、最大7万トンのタンカーを先導できる。同船は、2017年に完成予定で、北極圏ムルマンスク港を拠点として活動することが予定されている。


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