2024年7月17日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年10月17日

 軍事力には、相手が真剣に外交に取り組むことを強制させる効果がある。そして、早い段階での小規模な軍事力行使は、後々、より大規模な軍事力行使に迫られるのを避けることにもなる。

 「武装外交」の目的は、通常戦で相手を打ち負かすことや、曖昧な現状維持の下で相手と無期限に共存することにあるのではなく、交渉を進めることにある。その際、不本意な妥協は軍事的梃子の浪費に繋がる。

 我々は、独裁者を独裁的であると言うのを止めるべきではない。ロシアや中国に対するオバマ流の「リアリズム」は、彼らが行っている人権侵害を無視しすぎている。

 また、我々は、独裁者にとって短期間で受け入れられる成果を目指すべきではあるが、それが、独裁体制を盤石にし、長らえさせることに繋がってはいけない。譲歩は、経済制裁や人権侵害に対する抗議、差し迫った軍事介入といった、持続的圧力なしの交渉下でなされるべきではない。「武装外交」がうまく機能する場合には、軍事力は実際に使われることはない。しかし、だからといって軍事力が必要ないと考えるのは間違いである、と論じています。

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 「武力なき外交は、楽器無しの音楽のようなものだ」、というフリードリッヒ大王の言葉をそのまま翻案した論説です。具体的には、シリアに対する武力行使を中断して、問題を外交交渉に委ねた、オバマの政策を批判し、軍事力行使の可能性は維持しつつ交渉を行うべきである、という趣旨です。

 論説は、オバマの対シリア政策を批判するにとどまらず、軍事力を軽視するオバマ外交そのものへの批判を繰り広げています。そして、それは、オバマ外交の本質を衝いた批判と言えます。レーガン大統領の例をひいて、「武装外交」の目的を挙げていますが、これこそ、オバマ外交と対極にある、現実主義的外交の神髄と言えるでしょう。

 対シリア政策をめぐる迷走をきっかけに、オバマ外交を批判する論調が噴出しています。ここでも、オバマに対する同情的発言は一切ありません。

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