2024年11月21日(木)

Wedge REPORT

2024年1月14日

 筆者たちは、あまりにも偏ったニュースや記事は「フェイク」に近い扱いとする。科学的根拠のないデマ情報から、ごく少数の科学者だけが発信している偏った情報まで、フェイクを幅広くとらえている。

 例えば、福島第一原発のタンク内の処理水に含まれるトリチウム(水素の一種で三重水素)に対して、「生物に濃縮しやすいから危ない」と主張する学者がいる。実際にそういう主張を載せている新聞の社説(琉球新報・2022年5月21日)もある。しかし、いくら一科学者や一新聞社(論説委員)の主張、意見といえども、海洋放出された低濃度のトリチウムが生物に濃縮するという科学的な事実はない。

 このため、そういう言説もフェイク扱い(フェイクもどき)とする。つまり、トンデモ情報をフェイクと形容するケースもあるわけだ。

後を絶たないフェイク情報に対処するには

 このようなフェイク情報は後を絶たない。農薬や添加物などの食のリスクをめぐるフェイクニュース、遺伝子組み換え作物に関する誤解、除草剤グリホサートと発がん性分類をめぐる誤解、ネオニコチノイド系農薬に関する偏った報道、BSE(牛海綿状脳症)、中国産食品、新型コロナ、子宮頸がんワクチンなどについてもフェイク情報がはびこってきた。その背景には、新聞の世界をはじめとするメディアの分断の構図がある。

 社会心理学の本を読むと、「いくら科学的な事実を突きつけても、強い先入観を持つ人の考えを変えることはできない」という解説がよく出てくる。確かにその通りである。

 強固な考えをもった人に対して、「科学的にはこうです」と言っても、説得することは不可能だろう。しかし、世の中の6割前後は「どちらが正しいか迷っている」と思われる人たちだ。そのような迷いをもつ6割の人たちに対して、フェイクを見抜くために役に立つ情報をこれからも提供していきたいと思う。

 編集部からのお知らせ:『フェイクを見抜く』(唐木英明 小島正美、ウェッジ)の予約購入はこちら
Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る