2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年1月16日

 この論説はウクライナ戦争の今後についての核心的問題に触れている。注意深く読む必要がある。

 ウクライナは昨年、反転攻勢をきっかけに事態を一気に好転させることを目指したが、反転攻勢は失敗に終わった。こうした中で多くのことを考える必要があるが、上記のガルストンの論拠には少し疑問がある。

 たとえばロシアとウクライナを比べればマンパワーで4倍、経済規模で9倍と言っているが、マンパワーはともかく経済については、ウクライナには米国、EUなどの支援国がついている。これに対し、ロシアは中国、北朝鮮、イランの支援国しかない。

 またロシアの経済規模は韓国以下である。必ずしもウクライナが劣勢とは言えない。EUがオルバンにブレーキを掛けられ、米国が共和党のサボタージュで適切な支援ができないことは大問題であるが、これはまだ是正される可能性がある。

 軍事生産能力についても、ロシアは早めに戦時体制に移行したが、米国を含むNATOの弾薬生産量が少ないというようなことは双方の生産能力に鑑み、長く続くとは思われない。

ウクライナのNATO加盟はまだ遠い

 その上、確かに停戦はウクライナのEU加盟に道を開くと言えると思われるが、ウクライナのNATO加盟については必ずしもそうは言えない。NATO条約はその第5条で、加盟する1カ国への攻撃を全加盟国への攻撃とみなし、共同で反撃することを規定している。

 それゆえ、ウクライナが現在攻撃されていないという状態にならないと、加盟できない。ウクライナが停戦合意をしたからといって、そういうことにはならないのではないか。

 停戦の問題は、戦況と見通しを踏まえたうえで、ウクライナのゼレンスキー大統領が決断すべき問題であり、ウクライナにそうするように迫ったり勧告したりする時期はまだ来ていないのではないかと考えられる。

 なお、ガルストンが示唆するように、士気だけでは戦争はできないというのも真実であるが、「戦争で最も大切なのは士気である」というナポレオンの主張は今なお有効であると思われる。

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