米ハドソン研究所上席研究員のデービット・サターが、9月22日付ウォールストリート・ジャーナル紙に「ロシアの反米外交」と題する論説を寄稿し、プーチンの反米主義を指摘し、慎重な対ロ外交を勧めています。
すなわち、シリア危機からは、ロシアの提案によって脱することができたが、ロシア外交は、総体としてみれば、世界中で米国に敵対している。
米ロ間の価値の違いなど、当初からオバマ政権にも明らかであったはずだが、米ロ関係のリセットが追求された。しかし、ロシアの指導者は国民を信頼せず恐れており、法の支配や人権を主張する西側を自らの支配への脅威と考えている。
米国は、ロシアから防衛問題についての理解、テロ戦争での支援、ならず者国家への歯止めを得たいとしている。しかし、プーチンはいずれにおいても邪魔をして来た。
欧州でのミサイル防衛(MD)については、ロシア自身の専門家がロシアの大陸間弾道弾(ICBM)に脅威を与えないとしているのに、ロシア政府は、MDはロシアの抑止力に脅威を与えるとしている。
更に、ポーランド、チェコのMDをやめてルーマニアに移したのに、ミサイルがロシアに対して使われないとの法的保障を求め、合意がない場合、その施設を攻撃目標とするとしている。NATO事務総長のラスムセンはロシアの立場は「クレイジー」と言っている。
ロシアは米国の対テロ努力を掘り崩してきた。ボストン・マラソンでテロを行ったツァナーエフについて、連邦保安庁はダゲスタンでの接触について米に警告しなかった。また、ロシアは、国家安全保障庁(NSA)など、テロから米国を守る努力に害を与えたスノーデンを匿った。プーチンは、米国の利益は損なわせないと言ったが、情報漏洩は続いている。
しかし、ロシアの妨害が最も重大な結果をもたらしているのは、国家関係である。ロシアは西側の対イラン経済制裁は「国際法に反する」と主張してイランを擁護し、シリアのアサド政権を一貫して支持してきた。シリアで化学兵器を使ったのは反政府派であると言ってきた。米国はシリアの化学兵器をなくす米ロ合意の履行に努力するだろうが、ロシアとシリアは妨害し、国際社会の対応に失望した反政府派は過激化するであろう。
ロシアの反米主義は強くなりそうである。ロシアはソ連のようなイデオロギーを持たず、反米主義がその代わりになっている。またそれによって、ロシアは世界での役割を得ている。