フィナンシャル・タイムズ紙の1月13日付け解説記事‘Poland puts forward justice reform needed to unfreeze EU funds’が、ポーランドのドナルド・トゥスク首相率いる新政権が裁判所の中立性を回復するための改革を提案したことを報じている。新政権は前政権のPiS(法と正義)の遺産を一掃すべく、矢継ぎ早に手を打ちつつあるが、そのためPiSおよびドゥダ大統領との対立が先鋭化するに至っている。報道の要旨は次の通り。
ポーランドのボドナー司法相は裁判官の任命を司る機関の改革案を提示した。この改革はEUが凍結している資金の解除のために必要とされている措置であるが、それにはドゥダ大統領による承認が必要である。
1月12日、司法相は記者会見でKRS(国家司法評議会)の徹底した改変が裁判所の中立性を回復するには必須であると述べた。欧州委員会は、この改革は法の支配を巡る前政権との紛争のために凍結されたEU資金を解除する前提だとしている。
そのための法案は議会で可決されるであろう。しかし、法案成立のためにはドゥダの承認が必要であるが、新政権成立以来、彼はPiS(法と正義)とともにトゥスクのアジェンダを妨害している。
政権にあった8年間、PiSはブリュッセルに歯向かい、KRSを徹底して改変し、そのメンバーのほとんどが裁判官ではなく政治家によって選ばれることとした。この期間に2,000人を超える裁判官が任命された。
欧州人権裁判所は、KRSは政府と議会からの独立性を欠いているとの判断を下したことがある。2021年には、KRSは司法評議会の欧州組織から追放された。
KRSは国の三権によって選ばれる25人のメンバーで構成されるが、うち15人は裁判官である。改革案では、これら裁判官は議員ではなく、再び裁判官によって選ばれることになる。
1月11日、ドゥダは権力乱用の容疑で12月に有罪となっていたPiSの二人の議員に改めて恩赦を与え、彼ら「政治犯」の釈放のために戦うと表明した。彼らは庇護を求めて大統領官邸に逃げ込んでいたが、警察は9日に大統領官邸で逮捕した。
ドゥダは、二人は2015年に彼が与えた恩赦で庇護されているはずだ、と主張したが、この恩赦は裁判所で無効とされていた。司法相は、当面、政府には彼らを釈放するつもりがないことを示唆している。
ワルシャワ大学教授のピオトゥル・ボグダノビッチは、トゥスクによる司法の改革が、それ自体が法の支配に干渉するものだとの批判を回避しつつ、どこまで遠大なものたりうるかとの問題があると述べている。「最も重大で最も困難なのは、間違って任命された裁判官と彼等が出した判決をどうするのかという問題である」「もし、これらの判決をキャンセルしようとするなら、司法の判断に立法権が強力に干渉することになる」と同教授は述べている。
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