2024年11月22日(金)

古希バックパッカー海外放浪記

2024年2月4日

閑古鳥が鳴く中国の融資で建設されたマッタラ国際空港

乗客のいないマッタラ空港出発到着ロビー。奥の2人は作業員。仏さまも暇そうだ

 12月14日。中国プロジェクトの中でも大失敗の典型事例として挙げられる2013年に開港したスリランカ南部のマッタラ国際空港を訪問。中国が租借したハンバントタ港のあるハンバントタ市内から路線バスで空港ターミナルまで6キロくらい手前の高速道路脇の停留所へ。ここから高速道路しか空港へのアクセスがない。通りかかりの車をヒッチハイクしてターミナルへ。

 入場券売り場で250円(本稿では現地価格は現地通貨ルピー=0.5円で換算して円貨表示する)を払う。売り場には5人の女性がいたが入場者は来ないので手持無沙汰。空港には乗客が皆無なのでタクシーもない。帰路は5時過ぎに出発する職員送迎バスに便乗して市内に戻った。

週に5便だけで暇を持て余す150人の常勤職員たち

 空港ターミナル内は閑散として職員しかいない。案内所の2人の女性はおしゃべりに夢中。両替窓口に4~5人いるがパソコンやスマホで暇つぶし。保安検査場では7~8人の係員がお茶を飲んでいた。唯一仕事をしていたのが数人の掃除のおばさん。航空機の乗降客が皆無でも砂埃は溜まるらしくモップでのんびり床掃除。

頼みの綱のインドも断念したマッタラ国際空港の運営

 マネージャーらしき男性に聞くと昨年からロシアのレッド・ウイング航空が週5便発着している。月曜日と金曜日はフライトがないが常勤職員約150人は朝9時~夕方5時まで勤務。フライトがある日はメカニック、給油要員、入出国管理官、税関職員など約50人が発着時間帯にパートタイム勤務。

 以前インド政府が出資を検討中という報道があったので男性に聞くと何も聞いていないとの回答。

 2013年の開港以来定期便の発着がなく一時期中東のエアラインが週に一便運航していたが採算が取れず撤退。その後長い間空港施設は穀物などの倉庫として使用。経営が不安定で墜落事故も起こしているレッド・ウイングが撤退すれば空港は“高価な倉庫”に戻るしかない。

地元商工会議所もお手上げ

 12月15日。散歩中ハンバントタ商工会議所の看板を見つけたので事務局長に話を聞いた。インド政府との話は現時点では白紙のようだ。エアライン誘致に奔走したが手応えなく匙を投げたという。

 コロンボ空港に発着しているエアラインにコロンボ空港からマッタラ空港への延伸を打診したが採算が取れないとの回答。国営エアランカ、ロシアのアエロフロートなどに打診したがコロンボ空港から20~30分の飛行距離にあるマッタラに発着する追加コストは予想乗客数から逆算すると完全に採算割れと回答。

 マッタラ空港からスリランカ南岸のビーチリゾートまで地方道をバスで数時間。他方コロンボ空港から高速道路で同ビーチリゾートまで2時間半~3時間。つまり時間的に変わらない。

政治家の地元利益誘導の産物

マッタラ国際空港の正式名称はマッタラ・ラージャパクサ国際空港。2005年から2022年まで大統領・首相を歴任したラージャパクサ一族の地元がマッタラなのだ。本来はもっとビーチリゾートに近い候補地があったがラージャパクサ一族の地元であるマッタラに政治決定。

 空港建設費用に上乗せされた政治家一族への莫大な賄賂は請け負った中国の建設会社を通じて一族の海外口座に送金されたと宿のオーナーから聞いた。オーナーは自分たちの税金で中国への借金と賄賂と空港維持費を払うことに憤慨。


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