2024年7月20日(土)

古希バックパッカー海外放浪記

2024年2月4日

『2023.11.11~12.28 47日間 総費用22万円(航空券8万7000円含む)』

スリランカで影響力を増す中国と歴史的善隣外交のインド

 スリランカを歩いて思い出したのは2017年に訪れたネパール。地理的に中国とインドに挟まれたネパールでは両国が影響下に置こうと政治・経済・文化あらゆる分野でしのぎを削っていた。(東インド・ネパール周遊編『ネパールに見る中国とインドの熾烈な勢力拡大競争』ご参照

 首都コロンボでは否が応でも中国の浸透ぶりを実感する。コロンボ港をはじめコロンボ市内に林立する高層ビルは中国の融資・投資で建設されている(本編第1回 『財政破綻しデフォルト宣言したスリランカの庶民生活の現実(上)』ご参照)。そして債務の罠に陥ったにもかかわらず筆者は中国案件のコロンボ・ポート・シティー工事が続行されているのを目の当たりにした。他方コロンボではインドは比較的影が薄い印象だった。

 ちなみに外務省によると2022年度のスリランカの貿易相手国は以下の通り:

  • 輸出:米国25%、英国7%、インド7%、ドイツ6%……
  • 輸入:インド26%、中国18%、マレーシア5%、シンガポール5%…

 他方で2023年6月時点のスリランカの対外債務のなかで二国間債務は109億ドル。内訳は中国46億ドル、日本24億ドル、インド16億ドル……。つまり貿易相手としてはインドが中国より優勢。他方で“一帯一路プロジェクトで中国がスリランカを借金漬け”にしたことが明白である。

中国の露骨な経済協力アピールと巧妙な要人の囲い込み

建設現場に掲げられた一帯一路の要のコロンボ・ポート・シティの完成予想図。広大な埋め立て地に国際金都市、商業施設、複合物流センターに建設する

 11月15日。コロンボの国立病院街。内科、外科、消化器科、循環器科など診療科目別に多数の古びた病棟が並んでいる。一つだけ真新しい近代的ビルが周囲を睥睨していた。中央玄関の真上に漢字・英語で「中国援助・スリランカ国立病院外来病棟」とあり、中に入るとロビー中央に漢字の横断幕があり「建設完成引渡し式典10周年祝賀」と書かれていた。

 後日、政府関係者と話していたら家族に話が及び彼の子息は中国の大学を卒業して技術者となり豪州に移住したという。彼自身も産業視察で招待され中国に行ったことがある。スリランカ国立大学理系学部は超難関なので咄嗟に事情が推測できた。途上国の要人囲い込みの一環として中国名門大学には留学費用免除の友好国要人子弟受入枠がある。彼の子息もその一人なのだ。

中国が建設したコロンボ国立病院外来病棟は医療分野でも中国の存在感をアピール

エネルギー分野での中国とインド

 ネパールでは首都カトマンズへインド側と中国側からそれぞれ急峻な峠を越えて続々と石油を運んでくる両国のタンクローリーの隊列が印象的だった。

 スリランカで目立ったのはガソリンスタンドの“LankaIOC”のロゴだ。IOCとは(Indian Oil Corp.インド国営石油会社)の略称でありLankaIOCはIOCのスリランカ法人だ。スリランカを歩いた印象ではガソリンスタンドはLankaIOCとCEYPETCO(Ceylon Petroleum Corp.スリランカ国営石油)がほぼ二分していた。

 そんな状況のなかコロンボで見かけた比較的新しいガソリンスタンドの“SINOPEC”のロゴが目を引いた。SINOPECは中国三大国営石油の一つである中国石油化工。この巨大石油企業がスリランカ市場に参入してきたのだ。今後はIOCとの熾烈な競争が展開されるだろう。

Lanka IOCのガソリンスタンド。スリランカ国営石油は外貨不足で原油輸入が制限されるので劣勢のようだ

中国の債務の罠と利権政治の癒着

 スリランカの知識人階層は経済破綻が中国の債務の罠が直接の原因であると認識している。アヌラーダプラのロータリークラブの面々は一帯一路プロジェクトが政治屋の利権と汚職の産物と唾棄して“We hate China”と怒りを露わにした。他方で日本のODAや無償援助を絶賛。ODAの返済猶予期間が10~15年で金利も0.1%に比較して中国は数年の猶予期間で金利は2.0%と悪徳高利貸同様なのに政治屋は中国と結託したと批判。

中国の脅威を感じないスリランカの地方の日常と中国製工業品

 しかし庶民の間では中国の脅威はほとんど意識されていない。宿泊した10軒のゲストハウスのマネージャーも大半は債務の罠を知らなかった。首都コロンボ以外では直接中国によるプロジェクトをあまり見かけなかったし、観光客以外の中国人も稀であった。

 地方の人々にとり中国は中国製家電や雑貨という商品を通じて身近というだけの存在のように思われた。中国製家電製品、特に白物家電はどこの町でも電気屋の売り場の最大面積を占めていた。中国製品は安くて品質も悪くないので歓迎するというのが大半の庶民の中国観だろう。

スリランカ自動車事情、大型バスに見るインドと中国の棲み分け

 公共交通バスは圧倒的にインドのTATA社とLeyland Ashoka社の独壇場だ。予算不足で買い替えできず年季の入ったおんぼろバスが多い。公共交通バスは広告代を稼ぐためにカーラッピングしたインド製バスを頻繁に見かけた。

 他方で中国人を含む外国人観光客向け観光バスは中国金龍汽車の新車が多い。スリランカの外国人観光客は1位インド、2位中国が圧倒的で3位以下はロシアなど欧州各国。中国系ランドオペレーターが中国からバスを一括輸入して中国人団体旅行客を独占しているが、空いているバスを欧州グループツアーにまわしているのだ。

自動車修理屋の看板。中国製自動車のスペア・パーツとインドのタタ社の看板が出ている

インドと日本への期待

 コロンボ港近くの漁具問屋の老主人は日本とインドが協力して建設するコロンボ新港構想に期待を寄せていた。コロンボは地理的にインド大陸の各港への中継貿易港として最適であり石油を含めてインド向け物資の70%は将来コロンボ経由になる。ところが残念ながらスリランカの政権交代を機に日印協力のコロンボ新港プロジェクトは立ち消えになったらしい。

 日本は長年スリランカ発展のため円借款・無償支援を続けてきたので一か月半の間に何度も「ジャイカ(JICA)に感謝する」という言葉を聞いた。どこでも放浪ジジイが日本人と名乗ると日本は尊敬と憧れの国であるという言葉が返ってきた。筆者の個人的印象では日本へ出稼ぎに行った若い人からの口コミもありスリランカは台湾やトルコと同じレベルの熱烈的親日国家だ。

インドおよびインド人への微妙な感情

 インドはスリランカ北東部タミル人(インド系ドラビダ族でヒンズー教徒)の独立闘争に軍事介入したこともありスリランカには隣国の大国インドの影響力拡大に警戒する雰囲気がある。特にスリランカの多数派であるシンハラ人は警戒心を持っている。アヌラーダプラの民宿のシンハラ人仏教徒の青年はフツウのスリランカ人はインド嫌いだと明言した。

 現地の観光業従事者の間ではインド人は態度が尊大であれこれ要求し勘定が細かいとどこでも評判が悪い。他方で中国人は中国人業者が丸抱えの弾丸団体旅行なので現地観光業者との接点が少なくお金を落とすだけなので評判は悪くない様子。


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