2024年11月22日(金)

インドから見た世界のリアル

2024年2月6日

大成功だったバングラデシュ建国

 この「研究分析局」とその傘下の「機構22」は、71年の第3次印パ戦争で、大きな成果を上げた。パキスタンが、バングラデシュの独立運動を暴力的に弾圧する中で、独立運動を支援する役割を担ったからだ(※当時バングラデシュはパキスタンの一部だった)。

 最終的にはインド軍が介入して2週間でバングラデシュ全土を占領。情報機関が訓練した独立運動の武装組織は、住民たちの非常に強い支持のもと、バングラデシュ政府になった。これ以上ないほどの大成功だった。

 しかし、「研究分析局」と傘下の「機構22」の作戦が、いつもうまくいっているわけではない。過去には、信じられないようなミスもしている。スリランカにおけるミスである。

 当時、インド政府は、スリランカにおけるタミル人の独立武装闘争を支援していた。そして「研究分析局」とその傘下の「機構22」に対し、タミル人武装組織に武器を与え、訓練するよう指示していた。

 一方で、インド政府はソ連と同盟関係にあり、スリランカが米国海軍と関係を深め、その拠点化しつつあることに不快感を示していた。そして、もしスリランカが米国海軍との協力をやめるならば、インド軍が、スリランカのタミル人武装組織から武器を取り上げ、内戦を終わらせてやることを約束した。

 このインドとスリランカの2国間合意に基づき、インド軍がスリランカに派遣され、独立武装組織から武器を取り上げようとしたのである。つまり、インドの情報機関が与えた武器を、インド軍が取り上げるという、作戦になってしまった。

 タミル人武装組織側は、武器を取り上げようとするインド軍に激しく抵抗し、インド軍と戦闘状態になった。この戦闘は、「インド版ベトナム戦争」として拡大し、6万~10万人のインド軍が派遣されたが、最後は、インド軍が撤退に追い込まれることになった。

インド大国化で影響力拡大

 その後、インドの情報機関の活動は、インドの大国化に従って、世界各地で報道されるようになった。インドの置かれた戦略環境に基づいて、主な敵は中国とパキスタン(とイスラム過激派)で、それらに対抗するために米国、ロシア、イスラエルの情報機関との協力関係が伝えられている。

 例えば、2020年6月にインドと中国は印中国境で衝突し、インド側だけで計100人近い死傷者、中国側にも実数不明の死傷者をだした。その2カ月後、8月にもインド側で1人死者がでている。この1人は「特別辺境隊(元の「機構22」)」の隊員であった。チベット人であるため、葬式の際の御棺には、インドとチベットの旗、両方が半分ずつかぶせられていた。

 21年に米国軍がアフガニスタンから撤退し、タリバン政権が成立するまで、アフガニスタン政府を支えていたのは、米国だけでなく、国際社会の支援であった。その中で、日本とインドは最大規模の支援拠出国であった。

 インドの支援はインフラだけでなく、軍事支援にもおよび、戦闘ヘリコプターや、放置された旧ソ連製兵器の再生工場の設置など、多岐にわたった。インドは、アフガニスタンに大使館1つ、領事館を4つも設置しており、その多さは、情報機関の活動拠点でもあると推測されていた。

 23年、カタール政府は、同国にいる元インド海軍将校8人を、イスラエルに協力したスパイとして逮捕もしている。12月に減刑されたが、死刑判決がでるところであった。

 こういったニュースは、インドの情報機関がグローバルに活発に活動していることを示しており、インドが、情報関係の世界でも、世界レベルの大国として台頭していることを示唆しているのである。


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