2024年12月13日(金)

古希バックパッカー海外放浪記

2024年2月11日

鬱屈した民衆の心の叫びか、興奮の坩堝のロックコンサート

キャンディーの名門仏教系男子公立校の生徒会主催ロックコンサートのステージ

 大講堂に向かうと、ロックバンドがリハーサルをしていた。午後7時半開演。飲み物、アイス、ポップコーン、ホットドッグなどの屋台が並んでいる。学校は屋台からも寺銭を徴収している。

 切符はS席2500円、A席1000円、B席500円。大講堂はアリーナのような構造で2000人は収容できる。開演15分前ほぼ満席となりB席の後ろの立見席は生徒がぎっしりと並んでいた。

 開演と同時に生徒会幹部らしき生徒2人が壇上に進み出て流暢な英語で校長以下職員の協力に謝辞を述べ、さらに協賛企業を紹介。隣席のご婦人方によるとスリランカの有名人気歌手が5人も登場すると興奮気味。

 ロックバンドが演奏を始めると爆音が大講堂に響く。最初の歌手が登場すると、指笛がB席後方の立ち席から鋭く鳴り響く。そして拍手喝采の嵐。こうしてロックありバラードありのコンサートは2時間ノンストップ。

 ロックのつんざくような大音響と指笛連呼と拍手喝采で会場は沸騰。バラード曲では観客全員が歌詞を諳んじており2000人の大合唱。破綻経済の下で憤懣を抱える大人と受験勉強の重圧に藻掻く生徒たちの鬱憤を吹き飛ばす夕べであった。

所得格差=教育格差の負の連鎖

 公立・私立を問わず小中学校の近くの電柱や壁には至る所に数学、英語、化学、物理等の家庭教師の広告が貼りつけられていた。補習教室、英語学校などの看板も目立つ。公立学校の生徒でも上記のような3段階の全国統一試験を勝ち抜くために家庭教師、塾通いは必須。公立学校では落ちこぼれを最小限にするため成績が真ん中レベルの生徒に授業進度を合わせるので選抜試験に通らないと現場の教師はジレンマを抱えていた。

 貧しい庶民の子弟は高等教育を最初から断念せざるを得ない。田舎町のシーギリアの公立学校では義務教育を終えると半分以上は働き始めると副校長が語っていた。

刻苦勉励で運命を切り開く貧しい少女

ヌワラ・エリアの紅茶農園のタミル人労働者部落に住む少女と弟妹。この地方の歴史や巨大紅茶農園の経営など興味深い話も聞けた。彼女の学業成就を祈る

 ヌワラ・エリアの紅茶農園のタミル人労働者部落で1人の少女に遭遇。貧しい少女は幼い弟妹3人の面倒を見ながらOレベル試験のため裸電球一つの土間で勉強していた。父親の手取りは月に約1万円と紅茶・小麦粉の現物支給のみ。バスで数時間の村に暮らす母方の祖母が危篤だがバス代節約のため母親は見舞いに行かないという。

 彼女は全国統一奨学金試験に合格して地元の公立学校から町の有名私立学校に編入した。現在放課後と休日は町の補習校に通う。私立学校と補習校の費用は、ドイツ財団からの奨学金で賄っているという。後日農園付属製茶工場のゲストルームでドイツ財団の背景が判明した。この巨大紅茶農園と取引している欧州・日本・豪州の大手企業がフェアトレードを消費者にアピールするために農園労働者子女教育支援プログラムを提供している。彼女はその奨学金で最難関のコロンボ国立大学医学部を目指していたのだ。

 紅茶農園のマネージャーの話では農園の子供たちが通う地域の公立学校にプログラムから補助金が提供されているが個人奨学金は彼女一人だけと。彼女は極めて稀有なケースで幸運だったという。

 スリランカの正式国名はスリランカ民主社会主義共和国である。長年にわたり医療と教育の完全無償を標榜してきたが、公共政策の根底が崩壊しつつあると危惧した。

以上 次回につづく

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