欧州諸国とストルテンベルグ氏をあれ程苦しめた「大波トランプ」が再度やってくるならその「大波」を無効化する「防波堤」を構築するべきだ。欧州の自己利益のためだ。
「欧州・ユーラシア民主同盟」は可能性がある
この3月に実施される大統領選挙ではプーチン大統領の継続が濃厚となっているが、ポスト・プーチンの時代はいずれ必ずやってくる。その時、ロシアは民主化に向かう可能性がある。多数の専門家がそれを示唆している。
最近ではロシア生まれの経済学者で欧州復興開発銀行を経てパリ高等政治学院のセルゲイ・グリエフ教授の議論は注目に値する。同教授は昨年末ハーバード大学のデービス・ロシア研究所で講演し、ロシアの民主化は可能であるとして以下のように論じた('Russia’s Economy, War in Ukraine, and Hopes for Post-Putin Liberalization')。
米国の最先端のロシア研究所でもわざわざパリから専門家を招いたのだ。 ハーバード大学もロシアの民主化に関心を持っていることを示している。
教授の議論はこうだ。プーチン大統領は永遠でない。大統領がロシアの政治の舞台から去れば、今大統領の周辺にいる人々が権力を握る。しかし、大統領に近い側近たちは「プーチン2.0」になれるほどカリスマ性や人気がある者はいない。
その為、新指導部は個人というよりも集団になる可能性が高い。体制的にもプーチン型、即ち専制的で非民主的な集団支配の政権だ。
しかし、この体制では必ず大小の内紛が起きる。それはプーチン大統領が長年にわたり高官らが「互いを憎み、互いに不信感を抱く」ように仕組んで来たからだ。いずれビルの高層階からの墜落死、不可解な事故死、ベネズエラやアフリカへの出国が始まるだろう。
そして数カ月か数年後にはロシアでは「ペレストロイカのような事態」が再び起きる。ポスト・プーチンの大統領候補者の中には、突出して抜きんでた個人はいないので誰が優位に立っても、いずれは自分の力の限界を悟るだろう。
そうすると何とかして自国民の支持を確保しようとする競争が始まる。強硬独裁の時代は終わり、彼ら新指導層にとっては今や国民の支持こそが権力強化への唯一の道筋になるのだ。
当然、経済面、つまり国民生活を改善したら得点になる。そのための最も簡単な道はロシア経済を束縛している西側の経済制裁を解除することだ。
だから彼らは必ず西側諸国に手を差し伸ばしてくる。西側はこのような展開を想定してすぐさまロシアを受け入れ、前向きに対応できるように準備をしておくべきだ。
以上がグリエフ教授の議論だが、明らかに教授はウクライナ戦の帰趨とは関係なしにロシアの将来を論じている。プーチン大統領は万が一にも自分の地位に異常が生じたら、国際刑事裁判所(ICC)への身柄引き渡し拒否を含め、自分の生存を絶対的に保障する為あらゆる暴力手段を使うはずだ。
しかし、その辺の仔細は議論されていない。グリエフ教授としては「現状ではそこを云々しても埒が明かない。しかし、大きな筋道としてはポスト・プーチンのロシアは西側に接近する可能性がある」と論じたいのだと推測する。