2024年5月27日(月)

古希バックパッカー海外放浪記

2024年2月25日

プランテーションは貧しい人々の生活を支えるセーフティーネットなのか?

 P紅茶農園の紅茶畑の真ん中の宿に10日間逗留して広大な農園を歩き回って、自分が資本主義の現実世界にいることが思い起こされた。マルクス的な解釈では土地を持たない無産者は農業労働者として搾取され資本家が富を独占する図式なのだろうが、どうも腑に落ちない。

 P紅茶農園の経営陣は与えられた自然環境のなかで最適の方法でお茶を栽培して収穫して世界市場で競合相手を押しのけ、販路を確保して収益を得るというサイクルを回し続けなければならない。そのために無産者の農民が生活維持できる賃金を保証して、所有地の一部を農民の部落として与え、茶摘み女が安心して働けるよう託児所を運営し、(公教育が普及する以前は)無産者子弟に教育を授けるために小学校をつくり、農民家族の健康を守るために診療所を維持する。

 経営陣にとり、先進国の消費者に訴求するためにフェアトレード基準への配慮は欠かせない。農園労働者を生かさず殺さず状態で放置すればブランド価値は損なわれ先進国市場を失う。

 氷雨の中で重い袋を背負い茶摘み作業をする女性が幸せなのか分からないが、少なくとも1日500円の現金収入が保証され、無償の医療が提供され、家族と暮らせる家があれば、明日への希望を保てるのではないだろうか。財政破綻した最悪の経済のなかで、最低限のセーフティーネットが紅茶プランテーションというシステムにより保証されているように思われたのだが。

 20年近く前のこと、中国の大都会である広州に出張で長逗留した。下町には乞食が多かった。乳飲み子を抱えた女もいた。中国人の同僚に聞くと「貧しい田舎で農民を続けるより都会で乞食をしたほうが生活できるからですよ。広西省の自給自足の寒村で畑を耕しても不作になれば食べるに事欠く。現金収入がないので病気になっても病院に行けない。都会ならゴミ集めしたり乞食したり小銭を得て残飯にありついたりして生きられる。だから農民がわずかな田畑を捨てて広州に出てくるのです」と解説してくれたことを思い出した。

以上 次回に続く

   
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