2024年5月16日(木)

古希バックパッカー海外放浪記

2024年3月3日

カナダへの移住目的の出稼ぎが人気の理由

 スリランカで頻繁に耳にしたのがカナダ人気である。

 11月27日。キャンディーのイタリア式幼児教育を採用している幼稚園は三階建ての立派な建物で20年の歴史があり富裕層向けだ。オーナー園長女性の娘は以前この幼稚園で教諭をしていたが結婚してカナダに渡航。カナダでも経験を生かして幼稚園で働いてカナダ国籍を取得。来年にはカナダのトロントで自分の幼稚園を開く予定だった。

ヌワラ・エリアの一等地の丘にあるザ・ヒル・クラブは160年の歴史を誇 る名門会員制クラブ。1875年には皇太子時代のエドワード7世、1921年には皇 太子裕仁親王(昭和天皇)が欧州訪問途上に逗留している。バーテンダー修行をしている二人の夢は海外一流ホテル勤務である

 12月6日。キャンディーの通りで出会ったゲストハウス・オーナーの青年はカナダ国籍を申請中。地元の名門セント・アンソニー・カレッジ出身なので裕福な家庭の出身らしい。彼はモルジブでホテルマンとしてのキャリアをスタート。現在はカナダのホテルで支配人をしている。キャンディーのゲストハウスは友人に経営を任せており、将来はカナダで自分のホテルを経営したいと抱負を語った。カナダは二重国籍を認めているのでスリランカ国籍を維持できるのでハードルが低いとカナダ移住のメリットを指摘した。

 12月17日。マラタの宿の雑役夫の爺さんはある晩自慢そうに娘家族の写真を見せた。娘は地元の公立学校を卒業してカナダに留学して卒業後3年で永住権を取得したと。スリランカ人の旦那と子供と一緒に幸せそうだった。娘夫婦は爺さん夫婦をカナダに呼び寄せて一緒に暮らすことを提案していると。

 フィリピンでも同様の話を何度も聞いたが、カナダでは移民政策の一環として留学生がカナダの大学を卒業してカナダで就業した場合には優先的に永住権を与えている。

 日本が少子高齢化で年々人口減少に直面しているのに歴代自民党政権が“馬鹿の一つ覚え”のように移民政策はとりませんと繰り返しているのとは真逆な積極的人口政策である。自国民の出生率上昇を目指して異次元の莫大な国費をかけても先進国では人口減少は止められないというのはOECD諸国の前例で検証されている“不都合な真実”と筆者は思う。日本人女性の出生率上昇だけを愚直に目指す政策に大いに疑問を呈する次第だ。

日本への出稼ぎの最大の問題点はブローカー手数料

キャンディー湖畔のゲストハウスのメイド。放浪ジジイの日本のお屋敷で 住み込みのメイドとして働かせてほしいとお願いされた。日本人年金生活者は立派なお屋敷に住んでいると思われているのだ

 11月25日。キャンディー郊外の宿のマネージャーの姪は地元で看護師をしながら日本語を勉強して静岡県の老人ホームで働いており、来日4年目だった。フィリピン人やインドネシア人が老人介護施設で働いていることは知っていたが、スリランカからも来日していることは初耳だった。

 12月5日。キャンディーのホテルのドアマンと話していたら友人が日本のホテルで働いているという。友人はエージェントに日本側のブローカー費用として40万円(注:本編では当時の為替レート1円=2ルピーで現地価格を換算して円貨表示する)を払って日本に渡航。40万円には就労ビザ、就労先ホテル斡旋が含まれると。自分も日本で働きたいがそんな大金は準備できないので放浪ジジイに「日本のホテルを紹介して身元引受人になってください」と泣きついた。

 宿に戻りメイドにドアマンの話をしたら正式ルートで就労ビザを取得して(技能実習生・特定技能のような制度のことらしい)で日本に出稼ぎに行くには一般に35万円くらいのブローカー手数料が必要と巷間で言われているという。35万円はスリランカの平均年収に近い金額だ。注)公立学校若手教師の月給は2万円程度と教師技能開発センターで聞いた。女性センター長は優秀な若い人が教師にならず海外へ行くのは当然と諦め気味だった。

 12月11日。ヌワラ・エリアのゲストハウス近くのビール販売店の土間で昼から店で買ったビールを立ち飲みして騒いでいる4人組の地元の若者。1人が2024年4月から日本でバスの運転手の仕事をすることが決まったので仲間で祝い酒という。聞くと日本の観光地の旅館組合が運行する送迎バスの運転手のようだ。月給は手取りで15万円という契約。他方ブローカーには手数料として約30万円払ったという。手数料の大半は日本側のパートナーに渡るらしい。

 やはり外国人の日本での就労にはブローカー手数料という暗闇が付いて回る。日本政府は外国政府の方針なので現地の労働者送り出し制度には関与できないという不可解な説明をして現行制度の抜本的改革を避けている。韓国政府がコロンボに窓口機関を設置していることから明白なように日本政府は“不可解な”言い逃れはできないと思うがいかがであろうか。

日本での成功者は中古車業者とレストラン経営

 11月25日。キャンディー郊外の宿のマネージャーの友人はコックとして日本で働いて日本女性と結婚。そして東京でレストランを開いて成功したとマネージャー氏は盛んに羨ましがっていた。スリランカ庶民の間では日本に出稼ぎに行き日本女性と結婚すれば“お金持ち”になれるという信仰がある。

 12月5日。キャンディー湖畔のゲストハウスのオーナーの弟は日本女性と結婚して中古車ビジネスをしていた。オーナー氏自身も2010年から数年間ビジネスを手伝って大阪、名古屋、筑波など各地で日本製中古車を買い付けたりパーツを仕入れたりしてスリランカへ輸出していた。
12月25日。ヒッカドゥア・ビーチの中堅ホテルオーナーのK氏は日本留学歴があり流暢な日本語を話す。2004年の大津波によりホテルが大被害を受けた時に再建資金稼ぎのため日本で数年間中古車ビジネスをしたという。

 K氏によるとスリランカの市中で走っている車の半分以上は日本製中古車。値段も安く高品質なので大人気らしい。そして在日スリランカ人のビジネスは中古車買付とレストラン経営が大半とのこと。

以上 次回に続く

   
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