フィナンシャルタイムズ紙欧州担当のトニー・バーバーが2月15日付け論説‘Elections threaten to upset Europe’s centrist apple cart’で、6月の欧州議会選挙で極右派が勝利すれば、欧州連合(EU)の気候、移民、貿易政策が混乱し、EU統合を推進する従来のコンセンサスが大きく弱体化する恐れがあると警鐘を鳴らしている。要旨は次の通り。
欧州がロシアとの敵対関係、中国との緊張関係、そしてトランプ返り咲きの可能性に取り組んでいる今、6月の欧州議会選挙は欧州の結束、影響力そして世界的な地位に有害な結果をもたらすことになりそうだ。極右派政党が、27カ国からなるEU圏全域で議席を伸ばし、欧州議会におけるパワーバランスを大きく変えることが予想されている。
何十年もの間、中道右派、リベラル派および中道左派政党が議会を支配し、統合に向けた政策を推進してきた。6月の選挙でこの中道派の多数派はおそらく縮小するだろう。
ある予測によれば、9カ国では極右派が1位となり、別の9カ国では2位か3位となる。その場合、極右派は、欧州の将来やEUの使命感にとって重要な分野での政策を阻害したり、変更したりし得ることになる。
主な例は、移民と庇護、法の支配、気候変動、国際貿易、EU予算、およびEUの東欧・南東欧への拡大案などである。これらについて、極右派は、選挙対策で国民的アイデンティティや主権といった彼らの主張を借りることが多くなっている中道右派と手を組むことで、EUの政策の内容や方向性を変えようとするだろう。
選挙で極右派が得票を伸ばせば伸ばすほど、投票後に任命される新委員会のいくつかのポストに対する要求が強くなる。
6月の選挙後、移民や難民庇護政策を厳格化する傾向はさらに強まるだろう。法の支配に関しては、ハンガリーのオルバンのような民主主義に背を向ける政府に対して強硬路線をとることに欧州議会の支持を得ることが難しくなるかもしれない。
気候変動もまた、熱い論争の分野になるだろう。欧州議会の右傾化で、EUのネットゼロ目標達成に必要な次のステップが遅れるか頓挫する可能性もある。