2024年11月24日(日)

Wedge REPORT

2024年3月13日

賃金が上がらない日本で価格は上げられるのか?

 一方で、そうした高価格化した製品・サービスを日本人が購入できるのかと問題もある。確かに、厚生労働省の賃金構造基本統計調査では1994年の大学卒初任給は19万4000円で2023年4月入職の大卒初任給は21万8千円とほとんど上がっていない。平均年収も1992年425万円、1997年467万円がピーク)で、2022年の平均年収は458万円 とほとんど上がっていない。

 厚労省『毎月勤労統計』によれば1997年から2021年にかけて日本のフルタイム従業員の平均年収の伸びが0.95倍に対して、経済協力開発機構( OECD)『Average Annual Wages』によれば、同時期の米国は2.2倍、英国が2培、フランスとドイツは1.6倍である。ちなみに人口減少国であるリトアニアやラトビアも6~7倍になっているという。

 日本の全労連の資料でも1995年を100として2016年時点での実質賃金の推移は日本89.7、米国115.3、英国125.3(製造業) となっており、程度の違いはあるが、日本では収入が伸びていないことがわかる。日本に住む日本人が物を買えなくなる、生活に支障が出る、観光を気軽に楽しめなくなる問題にどのように対処するかも考える必要があるだろう。

 実はこれはさまざまな対処方法が考えられる。一つは二重価格である。国籍や在住地域が特定できる場合には外部の人には高い価格を設定するのである。

 米国や英国の大学では留学生には倍以上の授業料を設定するパターンが少なくない。宿泊は国籍や在住地域が特定できるのでここで二重や場合によっては三重価格を設定することも可能ではないか。

 さらに、観光客から得た収入を地域に住んでいる人に配布する仕組を設定することも必要であろう。米国のオーランドはそれを先進的に行っている。これには法制度の問題があるので対応には時間がかかるであろうが、是非取り組んでいただきたい。

ポジティブな〝外圧〟で変化を

 もう一つは現在国が推奨している賃金アップをどんどん進めることである。これまで賃金を低く抑えてきたので、消費者が高額なもの・サービスを購入できず、それ故に低価格戦略を継続せざるを得ないというサイクルが続いてきたので、それを逆転しようというのが政府方針である。

 日本全体で賃金アップをし、消費者の購買力をあげて、製品・サービスの価格を上げ、企業が収益を確保でき、それがまた賃金アップにつながるというサイクルにするのである。その際、過去の高度成長期との違いは〝量を求めない〟ことであろう。自然資源のサステナビリティが課題となった現代は、稲盛氏が2択て提示していた後者「少量であっても利幅を多く取る」戦略を選択されることをおススメしたい。

 もちろんこのシフトを進める際には、途中でさまざまな軋轢が生じると思われれる。企業の新陳代謝時や、収入が思うように上げられない人への生活必需品の支援などは公共部門が支援する必要が出てくるだろう。

 日本の変化は多くの場合は外圧によって促進されてきた、今回のインバウンドはある意味〝お金を支払ってくれる〟外圧であり、それを変革のトリガーとしてポジティブに活用してはどうだろうか?

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