2024年11月23日(土)

Wedge REPORT

2024年3月27日

ここまで徹底する
家電リサイクルの現場

 家電の場合、破砕機にかける前に、まず人の手で解体する。有害なものや法律で回収が義務付けられているもの、あるいは単品としても材料に活用できるものを分けるためだ。残りを破砕機に掛け、3〜10センチメートルの大きさにする。金属とプラスチックが混合した状態だ。ここから、磁力選別装置、分級装置(破砕物のサイズを分ける)、非鉄選別装置などで「鉄」「アルミ」「銅」が回収される。金属類を除いた後のプラスチックはリサイクルするために単一素材への選別が必要だ。

 1月、筆者は三菱電機の傘下にある、グリーンサイクルシステムズ(千葉市緑区)を訪ねた。ここには、破砕後混合した状態のプラスチックが運ばれてくる。まだ銅線などの細かい金属が入っている状態で、その金属を除去しつつ、PP、PS、ABS、その他のプラスチックにより分ける。

グリーンサイクルシステムズの工場内部(WEDGE)

 使われるのは、①湿式比重選別装置、②静電選別装置、③X線分析選別装置。①湿式比重選別装置は、「浮沈選別」と「ジグ選別」という手法が使われている。浮沈選別は単純に水より軽いか否かでより分ける。PPは水より軽く浮き上がるので、これで分離できる。ジグというのは「ジギング」のことで上下に揺動させることにより、比重による沈降速度の差で選別する。比重の比較的軽いPS、ABSとその他の重いプラスチックを分けることができる。

 次は静電選別を行う。静電選別では、PSがマイナス帯電、ABSがプラス帯電することを利用する。この2つで PP、PS、ABSが選別される。

 X線分析選別装置は、プラスチックが臭素を含んでいないかを確認するために用いられる。具体的には、電気・電子機器のリサイクルを容易にし、人や環境に影響を与えないことを目的とした、難燃剤ポリ臭化ジフェニルエーテルを含んだRoHS(Restriction of the use of certain Hazardous Substances)指令(10種類の特定有害物質の使用制限に関する06年に施行された欧州連合〈EU〉の法律)への該当確認だ。

 グリーンサイクルシステムズ製造管理部長の筒井一就氏は「再生プラは環境対策というだけではなく、コストメリットもある。バージン材(新品の素材だけ使用したもの)は、石油価格の変動によって値動きが激しいが、再生プラは、そうした変動の影響を受けづらい」と話す。安定供給できるのは、強みと言えるし、コストメリットは使ってもらうための重要な要素だ。

 ここまでの工程を見せてもらい、大量の水が使われていることがわかった。湿式比重選別を使用しているためでもあるが、ゴミとして扱われた廃家電を、バージン材と同等まできれいにしなければならないからだ。このため、洗浄しながら選別している印象だ。だが、「水もろ過して使いまわしている」と、筒井氏。その口ぶりから、環境を守るためにできることは全て行っている自負がうかがえた。

 実はプラスチックには、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル(塩ビ)など100以上の種類がある。これは市場要求に従い、プラスチックの特性を変えて対応してきたからだ。本来なら、こうしたプラスチックも全て分類したいわけだが、まだ方法が確立されていない。しかし、方法がないわけではない。有名なのは欧州で実用化された「近赤外分光法」。反射光により選別する方法だが、反射のない黒いプラスチックだと選別できない。

 今、三菱電機が取り組んでいるのが、帯電特性の違いを利用した識別。現在の静電選別装置はPSとABSの2つで選別しているが、こちらは色に関係なく他のプラスチックでも種類ごとに異なる帯電特性を利用して選別できる。これがシステムとして実用化されると、ほぼ全てのプラスチックが選別でき、他の手法も組み合わせることで完全リサイクルへの道が開ける。


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