2024年11月21日(木)

知られざる現場、知られざる仕事

2024年3月22日

 生徒たちは味見読書から自分が調べたいテーマを決め、「情報カード」と呼ばれるプリントに必要な情報を書き出す。味見読書で読んだ5冊がテーマに関連しなければ、図書館内の別の蔵書から探す。冒頭の学校司書との会話はこの場面でのものだ。

生徒に配られる「情報カード」。情報源を精査する習慣が付きそうだ 写真を拡大

 学校から生徒に配られる「情報カード」の内容もよくできている。書き出した情報が「引用」「要約」「意見」「感想」「取材」「実験」「その他」のいずれに当たるのかを選ぶ項目がある。また、情報源も「本」「新聞」「雑誌」「インターネット」「その他(インタビュー、アンケート、パンフレットなど)」から選んで記載する。

 収集した情報がどのようなタイプのものなのか、それはどこから得たものなのかを正確に記録することができる。情報源については、例えば、本は「書名」「著者」「出版社(発行所)」「出版年」「ページ」を記載する欄があり、詳細に出典を書いておく習慣がつく。これは、学術論文においても、ビジネスの調査研究においても、役立つものと言える。

 同校の学校司書として2021年度から働いてきた小池氏は「全く本が選べなかった子どもが味見読書や情報カードへの書き出しを通して、だんだん自分で本を選んで、集中して読めるようになっていく」と振り返る。

公共の図書館の司書との違い

 学校司書は、15年の改正学校図書館法で正式に規定された。本の貸し出しや整理を行うほか、探究的な学習に必要な資料準備や授業時の支援も行う。同じ「図書館」の仕事として知られる司書とは、学校の授業に関わる部分で仕事内容は異なる。

 「購入書籍の選書をどれにするかは、学校の授業をメインとして考えている」と小池氏は公共図書館との違いを指摘する。「障害者スポーツ」の授業においても、生徒たちが調べるであろう題材を想定しながら、関連書籍に目を通し、どの本を何冊用意するかを考えた。生徒からの問い合わせに対応できるようどの本のどの箇所にどのような記述があるかも頭に入れた。

 国語教諭の大内恵美子氏は「事前に授業の内容を伝え、準備してもらい、授業中も支援に入ってもらえるので、計画的に進めることができる。授業中に先生ではなく、学校司書に質問をする生徒も多い。国語力というだけではなく、情報活用力もついている」と話す。

 同校がある荒川区は09年度から全小中学校で、学校司書を週5日6時間常勤させている。学校司書が毎日、生徒や教諭と顔を合わせることで、互いに親しみを持ち、コミュニケーションがとりやすくなる。これは、生徒への支援においてもそうだが、教諭との授業準備といった段階でも大いに役に立つという。国語だけでなく、数学や理科、美術、音楽、保健体育など全教科で図書館を活用した授業を取り入れている。

全国一律ではない環境

 学校司書が授業に参画することは、子どもの国語力や論理力の育成に寄与すると見えるが、こうした体制が全国的に行われている訳ではない。

 学校図書館法では、小中学校への学校司書の配置を促しているものの、あくまで「努力義務」としている。文部科学省の調査によると、20年5月現在、学校司書を配置する公立小学校は69.1%、公立中学校は65.9%。増加傾向であるものの、地域によって差がある状況となっている。


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