2024年12月22日(日)

知られざる現場、知られざる仕事

2024年3月22日

 日本人の「活字離れ」「日本語能力の低下」が叫ばれている。言語能力の低下は感覚や思考を形成する力を落とすものとなり、ビジネスにおけるコミュニケーションから技術の発展、諸外国との交渉や外交と、さまざまな場面に影響する。

 これからの日本人の国語力養成は、子どもの時の教育がカギを握るとも言えるが、そこで大きな役割を担うのが「学校司書」という仕事だ。学校司書は学校図書館の運営を担う専門職員だが、学校内の図書を管理するだけではない。授業や課題活動における読書支援もする。

学校司書の仕事は子どもたちの読書活動全般を支援する(WEDGE、以下同)

 街の本屋が減りつつある中、学校図書館の存在は子どもの読書機会と密接に関わると言える。学校司書の仕事の現場を取材した。

「どう情報を収集するか」を学ぶ

 「車いすテニスについて、調べています。どの本に載っていますか」

 「この本のこの部分に競技の歴史が載っているよ。選手のことを知りたければ、この本にどうしてこのスポーツを始めたかが書いてある」

 2月某日、東京都荒川区立原中学校の図書館での一場面だ。国語の授業で、生徒たちは自らが決めた一つの障害者スポーツについて調べており、その書籍を探す際に学校司書に質問していた。

 同校では、国語科2年読書教材として、急激に視力が低下し教師を諦めるもゴールボールで日本初のチームスポーツでのパラリンピック金メダルを成し遂げた『浦田理恵 見えないチカラとキセキ』(Gakken)を扱い「自分と本気で向き合う」ことについて生徒たちが考えていた。その次の単元として、図書館で一つの障害者スポーツについて調べ、必要な情報を書き出すこととなっていた。

 授業では、まず、障害者スポーツに関するさまざまな本5冊を5人1組の班に配られる。生徒たちはそのうちの1冊を3分間だけ読み、班の仲間と本を交換して、また3分間読むを繰り返し、5冊すべてに目を通す。

「味見読書」で生徒たちはさまざまな本に触れる

 「味見読書」と呼ばれる方法で、広く教育現場で活用されたやり方だという。「色々な本を手に取ることができ、集中力も持続されます」と学校司書の小池信子氏はメリットを語る。


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