AIに多くの職業が取って代わられると言われる時代、将来不安なく生きていけるように、できればわが子には専門的な能力を身につけて「理系の道」へ進んで欲しいと望んでいる親は少なくありません。そこで、小さいうちから塾や教育系の習いごとをたくさんさせている家庭がありますが、タスクの与えすぎには要注意。努力の方向を間違えてしまうと、子どもはどんどん理系から離れてしまいます。
では、どうしたら理系好きな子に育つのでしょうか。『理系が得意になる子の育て方』(ウェッジ社)ではたくさんの具体的な手法を挙げています。
落花生の表面のシワシワは何のためにあるのだろう?
中学受験の理科入試にはどんな問題が出題されるか──。理科といえば暗記科目で、一問一答の知識問題や公式に沿って答えを出す計算問題を思い浮かべる大人は多いと思います。しかし、今の時代の入試問題は大きく変わってきています。
例えば、千葉県の難関中学・渋谷学園幕張中学では、千葉県の名産である落花生について、13ページにも渡る問題が出題されました。
その中の一つが、落花生の表面にあるシワシワした編み目模様は何かという選択問題。①小さな根、②水を運ぶ管、③表皮の裂けたあと、④がく、⑤葉が付いていたあとの5つの中から正しい答えを選択するというものです(正解は②水を運ぶ管)。塾の生物の授業では、イネ科、ウリ科、マメ科などいろいろな種類の植物の特徴は学習しますが、落花生の表面のシワシワが何かまでは触れません。
こうした初見の問題を前にしたとき、「そんなの習っていないから、分かるわけないじゃん」と、適当に「えいや」と答えを書くか、「確かになんだろう? 全部の落花生の表面がそうなっているということは、何か理由があるはずだ」と日頃から考える習慣が身に付いているかが、合否の分かれ目になるのです。
また、東京都の難関男子校・海城中学では、メダカのヒレがどこにあるか絵に描く問題が出題されました。メダカは生物分野では定番問題で、メダカのヒレは5種7枚あることは塾の授業でも習いますが、今回の問題はそれがどこに付いているのか正しい位置に描き、メダカの絵を完成させるというもの。こうした観察眼を見る問題は、近年難関校で多く見られるようになりました。
落花生の表面のシワシワにしろ、メダカのヒレの位置にしろ、それを知っていても知らなくても、私たちの生活には支障は出ません。では、なぜ学校はこんな問題を出すのでしょう?
それは、日頃から自分の身の回りのいろいろなことに興味を持ち、物事をじっくり観察する子に入学して欲しいと思っているからではないでしょうか。身の回りの事象を自分事としてとらえ、考えているか──。それはすなわち「理系の素養」があるかどうかを見ていると言えます。