2024年11月21日(木)

Wedge REPORT

2023年5月14日

「なんでだろうね?」「よく気づけたね!」が好奇心を伸ばす

 「素養」というと、生まれ持っているものというイメージがありますが、「理系の素養」は生まれながらの性格や才能ではなく、小さいときからの過ごし方で身に付いていくものです。そういうと、早い段階から学習塾や学習系の習いごとに通わせたり、たくさん勉強をさせたりする親御さんがいらっしゃいますが、それはまったくの見当違い。

 「これもやりなさい!あれもやりなさい!」のタスクの与えすぎは、子どもの自由な時間を奪います。すると、子どもは時間に追われる毎日で、身の回りの不思議に気づけないどころか、さまざまなことに対して無関心になってしまうのです。

 理系に育つ第一歩は、身の回りの不思議を見つけることです。「空はなんで青いんだろうね」「カブトムシの足はどこについているのだろう?」など、世の中には無数の不思議があります。

 子どもが「なぜ?」「どうして?」と聞いてくるときは、賢くなるチャンスです。真面目な親ほど、聞かれたことに正確に答えなきゃと思ってしまいがちですが、必ずしも正解を教える必要はありません。

 親でも分からないことがあって当然。そういうときはお子さんと一緒に「なんでだろうね?」と不思議がるだけでいいのです。そして、気になったら一緒に調べてみたり、誰か詳しい人に聞いてみたりする。

 大事なのは、正しい答えを教えてあげることではなく、「よく気づけたね。すごいね!」と子どもの関心や視点を受け止め、褒めてあげることです。すると、子どもは嬉しくなり、ますます〝不思議なこと〟が放っておけなくなります。

 「なんだろう?」→「調べてみよう」→「分かった!」を日々体験していると、「なぜ?」が「知る楽しさ」につながることを子どもは実感できます。そういう子にとって、理科という教科はとても面白いものなのです。

 逆にいえば、子どもを理系に育てたいと望むのなら、子どもの口から「なぜ?」が頻繁に出てくるように、親がひと声かけてあげればいいのです。子どもは好奇心の塊である一方、自分の目に止まったものしか興味の対象にならないことがあります。そんなときは、子どもの視点が広がるように、「ほら、あの雲見て。面白い形をしているよ。どうして雲にはいろいろな形があるんだろうね」と〝不思議〟に気づかせてあげるのです。

 こうした親のさりげない言葉が、理系の素養を育てていきます。つまり、幼少期の親の関わり方がとても大切なのです。

 しかし、近年は共働き家庭が多く、また子育てに関しても情報過多で「わが子の将来に良さそうなもの」と聞けば、あれもこれもやらせたいと、親も子もとても忙しくしています。気持ちに余裕がないと、道端の小さな花や虫に気づくこともできません。

 また、何かに夢中になって遊んだり、何かをじっくり作ってみたり、壊してみたりといった体験もできない。すると、「なぜ?」も生まれて来なくなってしまうのです。

 わが子を理系に強くしたいと望むなら、あれこれ与えすぎず、親子で「ゆとりのある生活」をすることです。余裕がなければ、寄り道はできないし、子どもの〝不思議〟を受け止めてあげることはできません。


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