学校司書を配置していない学校は、教員で図書館の専門知識を持つ「司書教諭」やボランティアが運営を担っているという。司書教諭は担任などの学校業務と兼務となることが多く、図書館を活用した授業を支援するまでは難しい。ボランティアも授業への事細かな支援まで行き渡っていないのが現実のようだ。
また、学校司書を配置していても、みなが荒川区のように週5日常勤というわけではない。学校図書館協議会が23年6月に全国1741の市区町村教育委員会へ実施した調査によると、学校司書を「正規の職員(フルタイム)」としているのは1.1%、「正規及び臨時・嘱託の両方がいる」の3.8%と合わせても5%に満たない。「臨時・嘱託等(会計年度任用職員を含む)」88%とほとんどで、「民間の業者等の委託や派遣」が6.5%と続く。
小池氏は12年間、学校司書として働いてきたが、21年に現在の荒川区立原中学校で勤務するまでは、業務委託として働くのがほとんどだった。「週2日などの勤務形態も多く、生徒や学校ともなじみにくい。派遣会社を通じて業務の指示が出るので、指示の意図を汲みにくい。担当が変わると、やり方も変わってしまう」と振り返る。学校側としても、直接指示を出せなかったり、生徒らの個人情報を共有できなかったりと支障も多いという。
子どもたちにいかに投資するのか
荒川区は34の区立小中学校があり、学校図書館事業に23年度は1億8061万円、24年度は2億1044万円を計上している。約8割が学校司書の人件費、残りが図書の充実などに充てられているという。
原中学校の図書館前には「先輩たちのおすすめ本」として、生徒や卒業生が気に入った本を紹介する掲示がある。小説やノンフィクションを、イラストなども交えながら心に残ったフレーズなどによって魅力を語っている。子どもたちが本とともに成長にしている様子がうかがえる。
図書館での授業や学校司書との日常が子どもの国語力や論理力、情報収集能力、表現力などさまざまに寄与しているのは間違いないだろう。日本の未来を担う子どもたちの「読書力」を養うために必要なことは何か? 学校司書のあり方を通じて、今一度、考えたい。