ドイツをはじめ同盟国は直ちに派兵の可能性を否定して、マクロンの構想と距離を置いている。マクロンは一貫性を欠いている。
フランスは数カ月にわたって、ウクライナがEUの資金を使ってEU域外から砲弾を購入することに反対してきた。マクロンは2月26日になってようやく域外から購入するというチェコの計画を支持した。
フランスはウクライナへの武器供与がドイツ、北欧諸国、英国等よりも少ないとして批判されている。今年フランスがウクライナに約束した軍事援助はドイツの半分以下とさえ言われる。
マクロンは、西側諸国が軍隊をウクライナに派遣することを否定しないのは、「戦略的な曖昧さ」を再確立し、西側の支援が弱まるというロシアの想定を再考させるためだと述べた。しかし、この事は、もっと懸念すべきこと、即ち、ウクライナをどこまで支援すべきかで、同盟国の意見が分かれていることを明らかにしてしまったようだ。
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際立たせた欧州の分裂
マクロン仏大統領は、ウクライナへの派兵という選択肢を排除しないと述べたのは、戦略的曖昧さを再構築し、西側がウクライナに派兵することはなく西側の支援は弱まって行くとのロシアの想定を変えさせるためだと説明した。これに対して、ドイツ、英国、イタリア、スペイン、ポーランド、チェコ等からは、マクロンの発言を否定して、ウクライナへの軍隊の派遣や駐留の可能性はないとの発言が相次いだ。
米国のバイデン大統領は、ロシアによるウクライナ侵攻の前に早々と米軍の派遣の可能性を否定している。他方、ロシアは、西側がウクライナに介入すればロシアとNATOの直接衝突となると脅している。
上記の論説を含め欧米メディアは、曖昧戦略の再構築を試みるマクロンの意図は効果を挙げず、むしろ、欧州の分裂を際立たせたと見ている。
この論説では、フランスの対ウクライナ武器支援のレベルがドイツ、英国等に比べて極めて低く、EU資金を用いたEU域外からの弾薬の調達に反対してきたこと等、マクロンの一貫性のなさを指摘し、必要なのは言葉ではなく現実の緊急の軍事援助だと批判している。また、マクロンが戦略的曖昧さの再構築を目指すのであれば、もう少し事前に同盟国を説得する根回しが必要であったであろう。