2024年11月25日(月)

都市vs地方 

2024年4月1日

 80年と最近との違いで注目すべき点は、全体に県内進学率が高くなっている点であろう。つまり、全国レベルで見た県内進学率の上昇は、特定の県で県内進学率が大きく上がったためではなく、全体に 県内進学率が上がったために生じたのである。また、最近では県内進学率が最も高いところが東京都から愛知県に変わったことと、コロナ禍でも県内進学率の傾向はさほど影響を受けていないことも興味深い。

東京23区の定員制限は効果があったのか

 ここまで確認してきたように、過去40年の間、県内進学率は上昇してきた。しかし、今でも多くの県では半数以上が県外に進学している。

 こうした県外進学のうち、東京都の大学への進学の多さが耳目を集めてきた。その結果、次第に東京都への大学進学に伴う人口移動が問題視され、18年10月施行の地域大学振興法に東京23区内の大学定員について「増加させてはならない」と明記されている。

 昔はさほど問題視されていなかった東京への進学が近年大きな問題を引き起こしているように思える。しかし、東京への進学傾向は過去40年の間にかなり低下してきた。

 図2は東京都の大学への進学率を都道府県別に表している。青い四角が80年、橙の四角が19年、黒い円が23年の値である。

 上記の定員抑制策は18年10月施行で、次年度入学者の募集要項がすでに発表されつつある時期であるため、19年の進学者はこの政策の影響をさほど受けていないと考えられる。それにも関わらず、80年の値よりも多くの都道府県で低くなっている。

 また、19年と23年とを比べると、変化は少なく、若干高くなっているところが数カ所ある程度である。図には記載していないが、21年の値もこれら2年とほぼ同じで、コロナ禍の影響は観察されない。23区の大学の定員抑制策は県外進学の傾向には大きな影響をもたらしているとは考えられない。

 地域別の傾向をみてみると、東京への進学傾向が強いのはいわゆる東日本であり、西日本から東京都の大学への進学率は10%未満であるところが多い。東日本では東京への進学傾向は強いものの、80年に比べればその程度は低下しており、最近では過半数の生徒が東京へと進学するのは南関東に限られている。

 では、西日本最大の都市である大阪への進学はどのような状態であろうか。図3は各都道大阪府の大学への進学率を都道府県別に表している。ここでも、青い四角が80年の、橙の四角が19年の、黒い円が23年の値である。

 大阪への進学の多くは関西圏からであり、そこでも県外進学としての大阪への進学は80年から近年にかけてやや低下していることがわかる。また、大阪への進学は基本的には西日本からであり、東日本から大阪への進学は過去40年間非常に低い状態が続いている。


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