2024年5月4日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年4月23日

 中東研究所(ワシントン)のGönül Tolが、3月31日のトルコの地方選挙では、最大野党CHP(共和人民党)がエルドアン大統領の与党AKP(公正発展党)に圧勝した。在ワシントンのシンクタンク「中東研究所」Gönül Tolは、4月2日付けフィナンシャルタイムズ紙掲載の論説‘Election reverses show Erdoğan is more vulnerable than he thinks’で、CHPは2028年の国政選挙で今回の勝利を再現せねばならないと論じている。要旨は次の通り。

地方選挙で、エルドアン大統領率いる与党AKPが敗北した(ロイター/アフロ)

 3月31日の市長選挙で、有権者は単に市長や地方の行政当局者を選んだだけではなく、選挙を自らの治政に対するレファレンダムと位置付けたエルドアン大統領にメッセージを送った。彼は政府の巨大なリソースを使って激しい選挙戦を行い、AKPの候補が負ければ公共サービスを止めると脅迫すらした。ゆえに、CHPの歴史的勝利は単にAKPの敗北を意味するだけでなく、エルドアンに対する支持が徐々に衰えつつあることも示している。

 多くの野党陣営の支持者にとって勝利は遅過ぎた。地震への政府のお粗末な対応とトルコの悪化する経済問題がエルドアンの治政に対する一般の不満を高めたのを捉えて、彼らは昨年の大統領選挙でエルドアンを追放することを期待していた。

 しかし、野党陣営は失敗した。野党陣営はイデオロギー的に分断された6党の連立を率いるCHPの冴えないケマル・クルチダオールを候補に立てたのである。

 今回は違った。CHPを率いるのはエネルギッシュな若手のリーダーのオスギュル・オゼルである。彼は昨年の大統領選挙の後、クルチダルオールに代わって党首となった。CHPの市長候補は2019年以来3度AKP候補を破ったイスタンブール市長のエクレム・イマモールのようなカリスマのある人物だった。

 経済問題も野党陣営に有利に作用した。トルコ経済は既に苦境にあったが、大統領選挙後に危機は一段と深まった。


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