2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年4月23日

 急激な価格高騰は特に大都市部において貧困層に悲惨をなし、中間層を貧困にした。地震に見舞われた地域の人々はエルドアンに失望した。

 以上すべての要因が最悪の状況を生み、野党陣営はこれにつけ込んだ。エルドアンの地位は当面安泰だ。しかし、選挙結果は、彼は自身が考えている以上に脆弱であることを示唆している。

 権力にとどまるためには、経済を建て直し、トルコの悪化する諸問題に取り組む必要がある。28年に再度出馬するために憲法を改正し、大統領に生涯とどまるという夢は今やより遠い夢である。

 今回の選挙で野党陣営はトルコ全国の市のレベルにおいて良質なガバナンスと賢明な投資を提供する機会を与えられたのだから、CHPは今回の地方選挙の勝利を次の全国レベルの選挙で再現する用意があることを証明することが出来る。

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敗北の要因

 3月31日に行われたトルコの地方選挙で、最大野党のCHP(共和人民党)がエルドアンの党であるAKP(公正発展党)に対して地滑り的な勝利を収めたことが国際的に大きく報じられているが、その勝利の内容は大きく3つ挙げられる。

 第一に、全国の県の県都81の市長のうち、CHPが35、AKPが24を獲得し、CHPの市長がAKPを上回った。第二に、主要な県の県都(イスタンブール、アンカラ、イズミル、ブルサ、アンタルヤ)の市長のすべてをCHPが獲得した。第三に、総得票率はCHPが37%、AKPが35%となり、CHPが総得票数で最大政党となった。2019年選挙ではCHPが29%、AKPが42%だった。

 エルドアンの敗北の主たる要因は、インフレの昂進、金利の高騰、リラの下落に伴う生活の苦境に多くの有権者が我慢出来なくなったことにある、というのが大方の一致した見方である。上記の論説もその趣旨である。


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