2024年12月5日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2024年5月16日

政策の問題点

 政策が抱える問題点としては、第1に、政策目標が必ずしも明確・合理的なものでなく、評価が難しいことがある。例えば半導体投資ファンドについてよく報道されているような「国産化率向上」目標は実は曖昧であった。また、国産化率向上がアプリオリに良い(意味のある)目標だともいえない。

 第2に、研究開発体制、研究開発への出資において、国家・共産党の意向の反映が強化される体制が形作られつつある。こうした体制は、「0から1」、すなわち、これまでになかった技術を産み出すという意味でのイノベーションに適したものとは言えないことである。特に「国家安全」重視とイノベーションは相反するベクトルを有している。

 第3に、欧米諸国との技術・人材交流はやはり必須と思われるが、実際には対中国技術移転規制は強まる一方で、必要な技術導入や研究人材獲得がますます困難となっていることである。

世界と日本の対応

 最後に、中国の科学技術イノベーションへの対応について展望しておこう。欧米を中心に対中技術移転規制は強まる一方であるが、規制強化だけでは中国を抑え込めないことがはっきりしてきており、再検討が必要である。

 例えば、米国のHUAWAY(ファーウェイ)社封じは5G分野を中心としているが、そもそも5G分野で最も多くの特許を有するのは同社であり、同社は特許料収入を上げ続けていた。最近では、7ナノ・レベルの半導体微細加工に成功し、再びスマホ販売のシェアを盛り返しているだけでなく、OSの自前化を視野に入れていると報じられている。

 また、米国による対中技術移転規制は日本にとっても「他山の石」である。米国が日本向けに何らかの規制をかけてくることがないとは言えない。それを思いとどまらせるだけの「他にない優位性」をどうやって獲得できるのかについて、真剣に考えておく必要があると思われる。

 以上で紹介した内容の多くは、筆者が主査を務めた科学技術振興機構の23年度調査プロジェクト報告書『中国の“科技強国”戦略と産業・科学技術イノベーション』に負っており、ご参照願いたい。また、21~22年度にも同テーマの調査研究プロジェクトを実施している。各年次の報告書についても上記リンクから当該年次に移動すればご覧頂ける。

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