首相選出の多数化工作に伴う混乱が心配されたが、そうした情報はない。5月2日、議会は与党候補マネレを31対18(野党候補ワレ)で選出した。同日、新首相マネレは政権移譲が平和裏に行われたことにつき、「民主主義のプロセスを尊重、擁護していかねばならない」と述べた。
国民は、対立型指導者の退陣に安堵したのか。マネレの穏健な人柄やイサベル州出身(従来対立してきたガダルカナル島やマライタ島ではない)であることに期待したのか。選挙結果は、国民が、落ち着いた政治、全方位的外交、経済重視を望んだことを反映しているのかもしれない。
今が変化の機会であることを見過ごすな
上記の記事は、マネレ新政権の発足につき、①「たとえ対中関係を変える意思があったとしても、マネレが動ける余地はほとんどない」(中国はソロモンの木材輸出の大部分を輸入)、②しかしマネレの穏健な人柄やこれまで豪等関係国とうまく協働してきた経歴等に鑑み「もっと均衡のとれた外交」になれば国民は安心するだろう、③新政権にとり最重要課題は失業等経済だ、④新政権では米豪等はやりやすくなろう、と言う。
記事のこうした見方は適切だろう。中国偏重、対立的だったソガバレの政策志向や手法が変化する要素はある。
首相の政治スタイルは穏健、慎重なものに変わるだろう。マネレは、5月2日の豪州ABCのインタビューで「全ての国が友人で、どの国も敵ではない」外交政策を追求すると述べるとともに、中国との安保協定を維持するのかとの質問に対し「外交政策としてはそうだ。協定は現に存在している。再検討が必要であれば中国とソロモン諸島が協議すべきことだ」と答えた。
マネレは、対中関係は今のままに抑え、経済支援を含め西側との関係を強化して来るかもしれない。まさに中国だけでなく西側を含む全方位友好外交をやると言っているように聞こえる。
西側はその中で対中競争をし、中国の影響力をオフセットすることができる。現実問題として今すぐ中国のプレゼンスを押し戻すことはできないだろう。今後マネレの対中外交は難しくなる。マネレの今後の政策志向が注目される。
今が変化の機会であることは間違いなく、日米豪等は当面今後の協力、支援の姿勢を示すべきだろう。7月に東京で開催されるPALM10(第10回太平洋・島サミット)への参加でマネレがうまく国際デビューできるように支援していくべきだろう。
今後西側の外交活動に関与させていくことが望ましい。23年秋ソガバレは米・島嶼国首脳会談には欠席した。
ソガバレの影響力は残るのか、まだ分からない。ソガバレは選挙で辛うじて当選し、マネレ政権では蔵相として入閣した。マネレはソガバレ政権の外相だった。今後の両者の関係にも注目する必要がある。